異世界転生
磯部の朝は早い。
磯部の勤める、すきすき屋 大倉山駅前店は24時間営業である。
朝勤、夕勤、夜勤の3交代だ。
朝勤:8:00~16:00
夕勤:16:00~24:00
夜勤:24:00~8:00
副店長である磯部は、名ばかり管理職である。
労働時間は無制限
それゆえに、夜勤~朝勤の引継ぎにでるよう7:00には出社している。
そして、客足が落ち着く22時ごろまで店にいる。
だいたい15時間勤務である。
物理的に店以外にいる時間よりも、店にいる時間のほうが長い。
今日も、磯部は中古のワゴンRで大倉山駅前店に通勤していた。
時間は午前6:40 車はまだ空いておりほとんど通っていない。
磯部が法定速度+10kmぴったりで軽快にワゴンRを飛ばしていると、
いきなり大型トラックが空から降ってきた。
ちょうどそこは、上に高速道路が通っていた。
高速道路のガードレールを突破して、居眠り運転の10トントラックが落ちてきたのである。
ちょうど、運悪く、道路がガラガラなのにも関わらず、見計らったように10トントラックが磯部のワゴンRのちょうどピッタリ上に降ってきたのである。
磯部は、何も認識できずに即死した。
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
おれは、勤務先の牛丼屋に出勤しようとして、愛車のワゴンRを運転していた・・・
そしたら、気が付いたらコミケ会場に突っ立っていた。
な… 何を言ってるのか わからねーと思うがおれも何がなんだかわからなかった…
磯部は、異世界に転生していた。
磯部は、出不精でかつ友達もいないので、コミケになど行ったことがなかった。
それでも、毎年コミケのあとには、ネット上でレイヤーたちの写真が出回るので、それをなんとはなしに眺めていた。
コミケのレイヤーが多数いる世界、いわゆる異世界に転生していたのである。
「あ、あの~、すいません」
磯部はひょろっとした商人風の男に声をかけた。
「?」
「ここって、東京ですか?」
「トウキョウ・・・? いや知らねぇなぁ。 ここはエスタミルだぞ。 にいちゃん、変な服着てるな、何もんだ?」
「東京じゃない!? エスタミル??」
磯部は混乱した。
磯部が混乱している間に、男は去っていった。
その後、磯部は、様子をみることにした。
エスタミルの街を歩き回る。
そうして、ようやっと自身の立場を理解した。
異世界に転生したのだと。
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・・・・
磯部は恐怖した。
いきなり知らない世界に放り込まれて、いったいどうしろというのだ。
おれは、ずっと人に指示されて生きてきた。
親が言うから、学校へ行き
世間が就職しなければならないと圧力をかけるから、がんばって就職した。
世間が石の上にも三年、仕事をすぐ辞めるのはよくないと言うから、我慢してずっと仕事を続けた。
世間が転職するのはよくない、職場に迷惑をかけるのはよくないというから、職場に不満があっても仕方なく我慢して働いてきたのだ。
それを、いきなり異世界に転生させられるなど・・・
一体俺はどう生きていったらいいんだ!?
今まで自分の意志で、人生の選択肢を決めたことなどなかった。
いつも世間がいうから、こうしないと怒られるからと
そんな基準で生きてきた。
その世間がいきなり、消えてなくなってしまったのだ。
俺には、もう何をどうしていいかわからない・・・・・
磯部は、いままでの人生を激しく悔いた。
涙を流して悔いた。
そうこうしているうちに、日が暮れてきた。
磯部は悄然として、町の片隅を歩く
「すいませ~ん、ちょっといいですか?」
振り向くと、にこやかだが目つきの鋭い武装したマッチョが話かけてきていた。




