ニーティングライフ・オブ・出雲
出雲は、竜族の娘を目の前にして、さてどうしたものかと思案していた。
目の前には、頭からツノの生えた、そばかすの残る田舎っぽい少女が一人いる。
聞けばこの子は生贄だという。
出雲は、この女の子を好きなようにしてよいらしい。
厳密には、契約をすることで、この女を自由にできる。
契約により、出雲に与えられるのは絶対服従の令呪、使用制限などない。
ようするに、この娘に”なんでも”いうことをきかすことができるということだ。
出雲が、この娘に死ねと命じれば、死ぬ。
もちろん、それだけじゃなくて、文字通り”なんでもする”
この令呪は、契約によって得ることができる。
その契約とは、この世界において人間を裏切り、まもの側に忠誠を誓うことである。
竜族の娘、サラがオドオドした感じで説明してくる。
「おそれ多くも、出雲さまには、我々まもの陣営にお味方していただきたいのです・・・
わたくしのような小娘が代価であり、ほんとうに申し訳ありません。
ですが、どうぞわたくしのすべてを捧げますので、どうか、どうか、おねがいします・・」
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出雲は、21世紀の日本国からの異世界転生者である。
出雲は、結婚をあきらめた男であった。
いや、結婚どころか女性と関わるのをあきらめた人間であった。
時は、就職氷河期
就職先は当時流行の非正規雇用であった。
出雲は、それでも一生懸命に働いた。
休日は資格試験の勉強に充てた。
もともと、頭の悪くない出雲は、たくさんの国家資格を取得した。
そして、資格を武器に大手企業の子会社に、正社員として転職をした。
この転職に成功したとき、出雲はアラサーと呼ばれる年代になっていた。
アラサーのときに、結婚相談所に登録たり街コンに行ってみたりしたことがあった。
いわゆる、婚活というやつに参戦したことがあった。
しかしながら、低年収の出雲は相手にされることなく、傷つくだけの結果になった。
いや、ほんとうの問題は”年収”などではなかった。
ほんとうの問題は、出雲が”ツマラナイ男”だからである。
さて、バトル・オブ・婚活フィールドにおいて無惨な敗北をした、出雲。
キャバクラ嬢に貢ぐ、スナックの女の子に貢ぐなど
非モテ男がやりがちなことを一通り経験して、出雲は悟った。
女と関わるとろくなことがない。
女と関わらないほうが、幸福度が高い。
出雲は、21世紀の日本国の男性としては、比較的メジャーな考えに至った。
その一方で、出雲のキャリアは順風満帆であった。
2度目、3度目の転職をすることで、年収は右肩上がりに上昇した。
3度目の転職では、最初から1000万円を超える年収を得て、
5年たつ頃には、1500万円もの年収を得ることになった。
余剰資金を国内株式、米国株式、外貨預金、ビットコインなどの投資に回すことで、
着実に貯蓄を増殖させることができた。
お金(年収)があると、リスクをとれる。
リスクをとると、利回りが上がる。
利回りが高いと、お金が増殖するスピードが速い。
ようするに、カネがカネを産むのである。
40を過ぎるころには、
資産が一生遊んで暮らせるくらいの額に届いた。
大金をもつと、一生懸命働くのがイヤになる。
出雲は、会社を辞めて1LDKのマンションを買うことにした。
そして、理想の生活、「ニーティングライフ」を開始することにした。
ニーティングライフとは、働かずにダラダラ生活することである。
ニーティングライフ3年目を迎えようとしたころ、
出雲は心臓発作を起こして、死んだ。
残念ながら、出雲はその資産を使いきることなく死ぬこととなった。
そして、異世界に転生したのである。
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出雲を召喚したのは、まもの連合の盟主、魔王であった。
まもの連合は、冒険者たちの活躍によって日々弱体化していた。
・・・・たくさんの有力な魔物たちが、冒険者によって倒された。
魔物がいなくなり、魔物のテリトリーがなくなるとそこに人間が入植して、畑をつくる。
人間のナワバリが増える。
その一方、まものたちのナワバリは減る一方であった。
危機感を覚えたまものたちは、種族を超えて連合をつくることにした。
それでも、人間たちの勢いはとまらず、魔物は追い詰められていた。
先代の魔王が、その命を神に捧げることで、異界の知識を召喚した。
魔王の命の対価は、1枚の紙切れであった。
そこには、人間に勝つ方法、”戦略”が書かれていた。
その戦略とは
・異世界から戦士を召喚する
(召喚方法は図1を参照)
・召喚した戦士に、生贄(美少女)を捧げることで、まもの陣営に取り込む
・召喚した戦士がチートスキルで無双して、人間たちを圧倒する
・まものたちが平和に暮らせる世界を取り戻す
というものであった。




