商人 ハロルド
翌日、
磯部は、アドルフとともに商人ギルドを訪問した。
アドルフの友人だというハロルドは、意外にも赤髪のイケメンであった。
めちゃくちゃ仕事ができそうな雰囲気を漂わせている。
「よう、ハロルド!
久しぶりだな~」
「お、アドルフか、どうしたんだこんな朝早くに?」
「今日はお前さんに頼みがあってだな、いつも買ってるコメなんだが・・・・」
「ああ、コメねぇ。
ほとんどお前さんの店しか取り扱いがないしねぇ。
輸送費と保管費用がかかって仕方がねぇ。
南の国では、大量にあるんだからお前さんが輸入業者になったらどうだ?」
「!?いいのか?
ギルド公認の輸入業者になった場合、俺を通してしかコメを買うことができなくなるんだぞ?
巨大な利権じゃないのか?」
「いやいや、コメを食うやつなんて、珍味を求める冒険者くらいだろ。
取り扱いや調理方法もめんどくさいし、手間暇かかるし、すぐ食べないとダメだし、
そもそも、取り扱っている商人ギルドだって、人件費を考えたら赤字なんだよ。」
いきなり願ってもない提案をしてくるハロルド。
エスタミルでは、コメを食す文化がないらしい。
磯場は、前世を思い出す。
タコの輸出大国であるモーリタニアでは、現地人はタコを食べないらしい。
魚介類の宝庫であるグリーンランドに住んでたヴァイキングたちも、魚を食べなかったため、
寒冷化に対処できず全滅したという。
食文化は、必ずしも合理的にはならない。
コメは小麦などと比較して圧倒的に単位面積当たりのカロリー生産に優れているのであるが、
もったいない話である。
この世界では、コメを生産するだけで、国のパワーバランス等が変わるのかもしれない。
アドルフが食いつく
「ぜひ、俺の店を輸入業者にしてほしい。
輸入業者になるためには、ギルドに登録する必要があるよな。
今日、今すぐ、その手続きをしたい!
頼むよハロルド!」
「!?? いや、半分冗談のつもりで言ったんだが、なんでそんなに乗り気なんだ?」
「実は、ここにいるイソベにウチの食堂の2号店を任せたいと思っていてな。
イソベは南国出身で、コメを使った料理に詳しいんだ。
だから、ウチではもっとコメをたくさん購入したいと思っていてだな。」
「あぁ、そういうことなのか。
珍しいなぁ、南国は基本的に出国を規制しているから、密入国だよな。」
「うむ、密入国だな。 どうやら、ワケアリでエスタミルに逃げてきたらしい。
だが、イソベは悪い奴じゃない。
こいつの人柄は、俺が保証する。」
いつの間にか、密入国者=犯罪者にされてしまった磯部。
ツッコミたい気持ちはありつつも、ここはアドルフに任せることにした。
「イソベは、料理の天才だ。
遊ばしておくにはもったいなさすぎる。
だから、コメを買いたい。
今、ギルドの倉庫にあるコメをすべて譲り受けたい。」
「!?あぁ、それは構わないが、、
しかし、そうすると次回のコメの入荷は半年先とかだぞ。」
「だから、自分たちで輸入したいんだ。」
「そうか・・・まぁ、お前の言いたいことはわかったよ。
それじゃ、うちの副ギルド長に話をしておくよ。」
めんどくさいなぁ、という表情で、パタパタと手を振るハロルド。
これは、ぜったいにズルズル先送りするパターンである。
アドルフが、ドン!
と金貨が詰まった革袋を置く。
「これで、頼む。
今日中に輸出業者に認定してくれ!」
「は? いや、これお前・・・・・」
「俺は、このイソベと共に、コメに人生をかけることを決めたんだ!」
「しかし、いきなりこんな大金をもらっても・・・」
「・・・・・・俺は、駆け引きができねぇ。
だから正直に話そう・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・
アドルフとハロルド、そして磯部は、商人ギルドの空き部屋に移動する。
そして、卵かけご飯によるフランチャイズビジネスの展開と将来性を説明する。
「たしかに、その方法なら、コメの輸入と販売だけで、めちゃくちゃな儲けが出るだろう。
だが、そんなのうまくいくのか?」
ハロルドがいぶかしげな表情をする。
「そう言われると思ってな。
1時間くれ。今から俺の店で、イソベ丼を食ってもらう。
イソベ丼を食ってから決めてくれ!」
「わかった、アドルフ。
どうやら、俺にとっても人生を左右するような、大きな話のようだ。
あとで、ギルド長に説教されるかもしれんが、今から行こう。
一応、外出すると断ってくる。」
アドルフ、ハロルド、磯部は宿屋の食堂に移動する。
そして、あらかじめこうなることを予想していたアドルフが、手早く卵かけご飯を用意する。
「げ、生で卵を食べるのか?
大丈夫なのか、これ?」
戸惑うハロルド
「いいから、食ってくれ!」
圧をかけるアドルフ
おそるおそる、卵かけご飯を食すハロルド
パクっ、 、パクっ、 、
ハグハグモグモグムシャムシャ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
無言で卵かけご飯をむさぼるハロルド
「ふーーーーーー、、、、、っ」
すべてを食し、一息つくハロルド
「俺は、すべてを理解した。
つまり、俺はお前たちとハーレム王になる。
そういうことだな!」
「ハーレム王・・・・・・?」
あれ、大丈夫かこの子?
と不審げにハロルドを見るアドルフ
「あぁ、つい説明を端折ってしまった。
俺は、頭の回転数が早すぎる故、凡人の思考速度にあわせるよう注意していたのだが・・・・・
アドルフ、お前は料理人だ。
この種の輸入業などの商業的な手続きは不得意だろう?
俺が、コメの輸入業者をやる。
もちろん、お前たちにしかコメを売らない。
そして、われわれ3人で暴利をむさぼり大金持ちになって、そしてハーレム王になろう!
いま、その未来が視えた!」
なんだか、よくわからないが、
商人ギルドで働く、自称頭の回転が早いハロルドが、一緒にビジネスをやってくれるらしい。
磯部は、異世界転生4日目。
この世界の商習慣などまったくわかっていない。
アドルフは、磯部よりマシなものの、プロの料理人であり、商人ではない。
その点、ハロルドなら商人だし、商人ギルドの人脈もある。
さらに、ギルドでコメを取り扱ってきたため、輸入元も南国の業者とも付き合いがある。
非常に心強い。
「さぁ、さっそく、前祝いに”パフパフ屋”に行こう! いまの時間なら朝割が使える!」
「何言ってんだ! さっさと手続きをしろ! お前のハーレム王の夢は今の頑張りにかかってるんだろ!」
ギャーギャーとボケとツッコミ、
漫才を繰り広げるアドルフとハロルド
ともあれ、コメの輸入独占権はハロルドがやる気と責任をもって獲得してくれそうである。




