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異世界牛丼  作者: まさゆき
10/22

卵かけご飯 と 就職@異世界


・・・・翌朝・・・・


磯部は結局、なにもできなかった。


エリスは、部屋に着くなり、ベッドに倒れこんで寝てしまった。

磯部は仕方なく、2段ベッドの上で眠る。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・




「ちょっと、お客さん、起きてください!」


磯部は、宿屋のオヤジに起こされる。


どうやら、疲れのためかずいぶんと寝てしまっていたようだ。


聞けば、エリスたちのパーティーは、依頼を求めて冒険者ギルドに向かったとのこと。


磯部は、起こしてくれたらいいのに・・

と思ったが、エリスが気を使ってくれたのかもしれない。


さて、どうしようか?




>①冒険者ギルドに行く

>②仕事を探す

>③異世界転生のスキルを試す



ここは、③ だ!




異世界転生といえばチートスキルである。

何か、自分自身にも特殊なスキルが備わってないか、確認してみよう!


「すいません、この部屋って、しばらくいてもいいですか?」


「あぁ、エリスさんのパーティーは連泊だから構わないよ」

と宿屋のオヤジがOKしてくれる。


よし、ではスキルチェックだ!


磯部は、

 「ステータスオープン」

 「ファイヤー」

 「メラゾーマ」

 「アンリミテッドブレイドワークス!」

呪文を唱えてみたり、いろいろ体を動かしてみたり、はたまた金づちで自傷行為をしてみたり、いろいろ試したが、何も特殊なスキルはなさそうであった。


そうこうするうちに、昼になった。


腹が減った・・・・


なけなしのカネを払って、宿の食堂で硬めの黒パンをもしゅもしゅ食べる。


黒パンは、500ギル。

おいしくないのに高かった。

現地の物価はいまいちわからないが、居候の身で贅沢を言うのも気が引けたが、それでも高く感じた。


命の危険がある仕事をして、一日の稼ぎが8000ギル。

一日3食黒パンという、生きていくにはギリギリアウトな食生活をしたとしても、1500ギルである。

ここに、家賃とか服飾費とか、水道光熱費(これは異世界であるのかわからないが)が必要になる。


これは、キツイ。



食堂のオヤジに確認してみたところ、肉を食べるには少なくとも2000ギル程度の定食を注文する必要があるらしい。


磯部の元職場であるすきすき屋では、500円あれば牛丼を食べることができた。

とはいえ、昨今のインフレの影響があり、少し前までは500円でサラダセットを注文できたのだが、それも不可能になった。


年々、進行するインフレを苦に、来店頻度をさげざるを得ない独身男の同士たち・・・・

本当に懐かしい。


磯部は10年前を思い出す。

すきすき屋のワンオペ問題が騒がれていたころ、磯部は、まだ仕事を覚えきっていなかったから、成長している実感があった。

それが40歳を過ぎたころから、成長値がカンストした感じになった。

いっぽうで回りでは子供が大きくなったりして、ライフステージがかわってくる。

焦りを覚えるも、人生を変えるために何かできるか?というと難しく、ただ日々の仕事に追われる日々であった。




すきすき屋では、朝ごはんセットとして、290円で卵かけご飯定食を食べることができた。


500円で黒パンを食べるしかないこの世界と比較すれば、おどろくほど豊かであった。



・・・・・・・・・・・・・・・・ん? 卵かけごはん???・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



この世界に卵かけご飯は存在するのだろうか?



磯部は卵かけご飯の調査を開始する。

(といっても、食堂のオヤジに聞いてみるだけなのだが)


ヒアリングの結果、以下の事実が明らかになった。


・卵の値段はとても高い。

 鶏卵は貴重品

 どうやら、異世界ではブロイラーのような動物を工場的に取り扱って卵や鶏肉を大量生産するようなことはしないようだ。

 各家庭で、自分ちのニワトリを飼って、そのニワトリが産む卵を食す

 なので、市場に出回る卵の量が少なく、そのため値段も高めだし、大量に仕入れることも難しい

・コメも高い

 コメは存在するものの、南の国で栽培されており、輸入品として扱われる

・しょうゆはある  

 しょうゆはフツーに存在する


磯部が落胆したような表情を見せると、食堂のオヤジが怪訝な顔で聞いてくる。


「コメと卵で何をするんだ?」


「いや、自分の故郷ではコメと卵でつくる料理があって、めちゃくちゃ安くておいしかったんだ。

 それをここでも作れないかと思ったんだが、コメと卵が高いって聞いたから・・・・」


「コメと卵の料理なぁ、、ここは冒険者向けの料理屋だから、いろんな料理を提供できるようにしているんだ。

 冒険者たちは高給取りだけど命の危険があるから、金払いがいいからな。

 グルメなんだよ。

 どれ、一回そのイソベの故郷の料理とやらを作ってくれないか?」


「あぁ、かまわないよ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・



・・・



食堂のオヤジ、アドルフが新鮮な卵とごはんとしょうゆを用意してくれた。


「本当は、しょうゆにダシを入れた卵かけご飯用のしょうゆがあればいいんだけど・・・・」


磯部は、丁寧に卵を洗うと、炊き立てのご飯に卵を落とすとしょうゆを入れて混ぜ混ぜする。


「はい、出来上がり!」


「えっ、これだけ?」


アドルフは、その簡単な料理に驚いている。

磯部は、自分が食べたかったが、スポンサーにまず食ってもらおうと、アドルフにすすめる。


「ささ、温かいうちに、食べてください」


「お、おう・・・」


アドルフは、おそるおそる、卵かけご飯を口にする。


「は?、なんだこれは? 卵のふわっとした感触と、このアツアツのご飯!

  こんなうまいもの食ったことねぇ!!

   Ura aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


アドルフというドイツ人っぽい名前なのに、ロシア人っぽく「ウラー」と叫ぶアドルフ。



「イソベ、お前は天才だ!」


熱い視線を向けてくるアドルフ。


「いやでも、卵もご飯も高いんじゃ・・・・・」


「大丈夫だ、ここは冒険者向けの料理屋だ。コストは多少高くてもうまいものを提供するのがウチの店なんだ。

 イソベ、お前は夜逃げしてこのエスタミルの街にやってきたのだろう?

  どうだ、この食堂で働かないか?」


「え? でも人件費とか大丈夫なんですか?

 この食堂の規模だと、十分ひとりで回せるんじゃ?」


「確かにその通りだ。

 しかし、お前のこの卵かけご飯には価値がある。

 もちろん、この料理だけをパクることは可能だ。

 しかしながら、な、、、、俺のカンだが、お前さん、まだまだ隠し玉をもってるんじゃねぇか?」


磯部は考える。

そりゃ、異世界から転生してきたから、多少は・・・


異世界でも、どこかで働かなければならない。

働くのであれば、前職とおなじ飲食系ということで、この食堂で働くのが正解な気がする。

そして、磯部の故郷、ニッポンは飽食の国である。


もっとも、磯部はうまいものの価値をあまりわかっておらず、すきすきや、やよう軒、サイゼリリア、将軍などのチェーン店しか行かない主義であった。

とはいえ、それでも和食、イタリア料理、中華料理と、世界中のうまいものを食べてきていることに気づく。



「わかりました! ぜひ、ここで働かせてください」


「よっしゃ! まずは、今日の夜は、そうだなこの卵かけご飯を定食にするぞ!

 名前をつけよう、イソベ丼だ!」


「?いいんですか、僕なんかの名前を使って?」


「もちろんだ!

 お前さんが発明したんだから!」


厳密には発明したわけじゃないんだけど、、とか思いながらも、ありがたくイソベ丼を提供することにした。



「そうと決まれば、原料を調達しなきゃな!

 よっしゃ、いくぞイソベ!」


アドルフに連れられて、エスタミルの周辺の農家を訪ねて卵を買い占めに向かう。

なお、コメはある程度在庫があるらしく、アドルフの家からもってきた。


夕刻、いよいよイソベ丼の提供を開始する。


気が付いたらエリスたちが戻ってきていた。


「あれ、イソベもう就職きまったの?」

エリスが驚いている。




最初の注文者は、エリスのパーティになりそうだ。


「今日はあんたの故郷の料理なんだってね、楽しみにしているよ!」


今日の定食は、卵かけご飯(イソベ丼)と焼き魚である。




イソベは、卵かけご飯の作り方をエリスたちに説明する。


「生卵、大丈夫なのかい?」


エリスが不安がる。

生食に抵抗があるようだ。


「大丈夫です、今日、農家さんからもらってきた新鮮な卵ですから。

 そして、ちゃんと洗ってサルモネラ菌等にも注意して、衛生管理は万全を期しています」


「さるも?・・・・まぁ、イソベががそういうなら、、、、」

「まぁ、イソベはともかく、アドルフが変なものを出したりしないでしょ」


おそるおそる、卵かけご飯を作るエリスたち。


パクっと一口を食べる。


「うんま~~~~~~~~~~~~~~~~^^^!」


とたんにがつがつと食い始める。


「こんなうまいもの、食ったことない!」

「なにこれ、うますぎて、うますぎて、、涙が、、涙が止まらない!!」

「ハムハグハグハグ、、、」



イソベ丼こと、卵かけご飯は、あっという間に売り切れた。



普段の常連だけではなく、

「この世のものとは思えないおいしさ!!」

と冒険者たちが吹聴したため、普段食堂を利用しない近所の人たちまでやってきて大騒ぎであった。


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