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プロローグ

『はい、今日も始まりました! 幽霊・妖怪何でもござれ、百祈八光(ひゃっきやこう)のこいこいラジオの時間です!』

 明かりの灯らない部屋の中、窓から差す月明りだけを頼りに一人の男は楽しげにしゃべり始めた。机上のマイクに向かい前のめりになりながら話す姿はまるで子供のよう。

『この番組は、毎週水曜午前二時よりお送りしています。リスナー様からいただいた幽霊や妖怪などに関するお悩みを、私綴祈(つづき)率いるお悩み解決集団・百祈八光がズバッと解決しちゃいます』

 軽くラジオの説明をしてから彼ーー綴祈は、一枚の紙を手に取った。

『はい、今日のお便りは……』

 数秒にも満たない時間で文章に目を通したのち、嬉しそうに微笑む。

『おお、初めてのリスナーさんだね。ペンネーム泡沫(うたかた)さん、お便りありがとう。なになに、綴祈さんこんばんは。最近私の家の近くの墓地から、毎晩奇妙な音が聞こえてきます。何かを引きずるような、物が擦れるような音が決まって午前三時に鳴り始めます。最初はあまり気にしていなかったのですが、段々音が近づいてきているような気がして怖くて眠れない日々が続いています。ぜひ、百祈八光の皆さんに原因を突き止めて解決してもらいたいです。よろしくお願いします。とのことだね。りょーかい!』

 持っていた紙を傍に置き、誰もいない空間を真剣に見つめ答える。 

『じゃあ、今回は青短の皆に任せようかな。泡沫さん安心してね。君のお悩み、我々百祈八光が責任をもって解決します』

優しく、そして包み込むような声音で綴祈は言葉を紡いだ。

『まだまだお悩み募集中だから、じゃんじゃん送ってねー!』

 ありもしないテレビのテロップを指さすかのように、先程とは打って変わって明るい声で呼びかける。

『それでは、また来週!以上、綴祈がお送りいたしました! 』

 マイクの切れる音と共に静寂に包まれた部屋の中で、綴喜は深く息を吐いた。

「これが最後かな……」

 安堵とも悲しみとも取れる呟きは、降り始めた雨音によって掻き消された。

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