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さよならをあなたに  作者: キムラましゅろう


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愛しい日々をあなたに 〜魔法省特務課の事件簿〜 菫、リッカと会う



今朝は楓のぐずりが酷く、夫の弁当を作る事が出来なかった。

が、アパートの大家であるミス・ポワンフルが楓を預かってくれる事になったので、菫は遅ればせながらも夫レガルドに弁当を届ける為に魔法省を訪れた。


かつては菫自身も勤めていた魔法省。

今は休職中だが、有り難い事に菫の籍はまだ特務課にあるという。


その勝手知ったる省内を歩いているとふいに声をかけられた。



「あなた……もしかしてレガルド=リーの奥さん?」


声がした方に振り向くとそこには如何にもキャリアウーマン然とした美女が立っていた。


一分の隙もないフルメイクに美容院(サロン)帰りのように完璧なヘアスタイル。

魔法省のローブで隠されてはいるものの、体の線を強調したブラウスにミモレ丈のタイトスカートはスタイルの良さを引き立てている。

そして踏まれたら相当なダメージを食らいそうなピンヒールに編み目の細かい編みタイツを合わせていた。


自信に満ち溢れた強い眼差しは彼女の美しい顔立ちの中でもひと際印象的だった。


菫にはその相手が誰なのか直ぐにわかった。


魔法省でもこれほどの美女となると、もはや知らない者はいないというほど認知度のある女性だからだ。

そしてハルジオの元カノであるという事からも知っていた。


「リッカ=ロナウドさんですね。はじめまして、李亥菫と申します」


菫から名乗り挨拶をすると、リッカは笑みを浮かべた。


「やっぱりね。長期育休中のレガルド=リーの妻はいつも東方の着物を着ていると有名だから。でも私の事はどうして知ってるの?やっぱりレガルドから聞いた?それともハルジオ?」


「夫からです」


「ふぅん……私もね、あなたの事は魔術学園時代から、存在だけは知っていたのよ」


「まぁそうなのですね。でもどうして?」


「そりゃあ、どんな美少女に告白されても興味も示さなかったレガルドの心を独占する女が東方にいるって学園では有名だったのよ」


「私が?」


「ええそうよ。どんな女かとみんな色々と詮索して噂していたものよ。私にはハルジオがいたから興味はなかったけど。……でも、なんか、拍子抜け」


「あら、そうなのですか?」


「だっていかにも清楚系美人で男受けしそうな感じでつまんない?という感じだからかしら。もっと意外性のあるインパクトが欲しかったわ」


「まぁそれはご期待に添えなくてごめんなさい」


わざと棘のある言い方をしたというのに菫は大して意に介する事もない様子だ。



「……気を悪くしないでね?思った事を率直に口にするタイプなの」


「アデリオールの女性は自身の考えがしっかりした女性が多いですよね。素晴らしい事だと思います」


「逆に東方人の女性ってなんか狡いわよね、思った事をなかなか口にしないで。ホントは内心、毒吐いてるんでしょ?今のあなたの様に」


「いいえ?毒吐く理由がありませんから」


「は?」


初対面なので抑えてはいるが、挑発的な発言をしているというのに。

全く対応に変化のない菫にリッカは苛立った。


ーー品行方正で通ってるレガルドの妻が不機嫌で怒りを滲ませている姿を本省(ここ)で晒してやったら面白いと思ったのに。


リッカは前々からこのスミレという女が気に入らなかったのだ。


それも自分を差し置いて魔法省一の美女と言われているのが気に食わないという理由からだ。



ーーどうにかしてそのお綺麗な顔を怒りで歪ませてやりたいのだけど……。


菫に何かしら言おうとしたその時、ふいに転移魔法の波動を感じた。

と思ったら菫のすぐ後ろにレガルドが現れた。


こっちはあからさまに不機嫌な顔でリッカを見据えている。

わざわざ飛んで来たという事は妻に絡んでいた事がバレたのだろうか。


「レガルド様」


夫が来た事を知り、菫は振り返る。

レガルドは表情を和らげて菫を見た。


「菫、弁当ありがとうな」


「ううん。お昼前に渡せて良かった」



自分に向けるものと明らかに違うレガルドの表情を見て、内心気を悪くしながらもリッカは平静を装ってレガルドに言う。


「あ、あらレガルド。久しぶりね、同じ本省勤めだというのに中々顔を合わせないものね」


「……妻に何か用か?」


「べつに?ちょっと挨拶していただけよ」


「菫は菩薩の如く慈愛に満ちた性格の持ち主だからな、お前の安っぽい挑発には乗らなくて残念だったな」


「っ!な、何よ…ソレっ……」


たった今、転移で現れたばかりなのにまるで話を聞いていたかのような口振りに、リッカはたじろいだ。


そんなリッカにレガルドは言う。


「お前、その性格ブスをなんとかした方がいいぞ。どんなに着飾っても、性格と行いが醜かったら意味ねぇぞ?」


「ちょっ、誰がブスよっ!」


レガルドの発言に思わず荒げたリッカの大きな声がエントランスホールに響き渡る。


その場にいた者の視線がリッカに集中した。


本来なら菫をイラ立たせてこの状況と同じものに陥らせてやろうと思っていたのに、リッカ自身がそうなってしまった。


「っ……も、もう、冗談じゃないわよっ」


リッカはそう言ってその場を逃げ去った。


その様子を菫はきょとんとして見ている。



「リッカさん、どうしてあんなに怒ったのかしら……?」


「菫は絶対に理解出来ない事だから。どうせ大した事じゃないしな」


「そう?」


「それより、楓が大丈夫ならちょっと特務課に寄ってくか?」


「ミス・ポワンフルが気分転換しておいでと言って下さったから、少しだけお邪魔して帰るわ」


菫がそう言うとレガルドは弁当を受け取り、菫の肩を抱いて特務課の部屋へと歩き出した。


データ管理室に居たところに菫の気配を感知したのだ。

繋がった魔力により菫がどこに居ようとも居場所はすぐに特定出来る。


菫の気配が動く様子が一向にない事から誰かに捕まっているかもしれないと転移してみれば、菫は案の定魔法省の者に捕まっていた。

しかも性悪のリッカ=ロナウドに。


どうせ菫相手にマウントをとって菫の機嫌を損わせようとしたのだろうと思い、鎌をかけると図星だったようだ。


すぐにでも制裁を与えてやろうかと思ったが、それはハルジオの役目だと思いやめておいた。


リッカはある意味命拾いをしたのだ。


そしてそれからひと月後に、リッカ=ロナウドは次長クラスに昇進した上で、ハルジオのいる地方局へと転属となった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



リッカはハルジオとレガルドは自分に一番近しい男だと認識しております。

完璧な自分の近くにいるのに相応しい、アクセサリー的な存在だと。


その二人が自分とは正反対の女性と結婚した事が気に入らないようですよ……。


一方自分は将来性のない関係を続けているわけで。


その高官との逢瀬をキープしつつ、地方局に戻ったらハルジオとも復縁しようとしていたと…強欲すぎますな……。



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