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李亥レガルド奇譚 ④

おこしやす♡

いつもありがとうございます!



菫を紫檀楼へ預けて二年が経過しようとしていた。


その間もレガルドは時が許す限り菫の元へ通い、その裏では謀叛を企て発覚しそうになるやその罪を菫の父やその他の家臣に押し付けた異母兄や外祖父の不行状や汚行、その悪事の全ての証拠を集めていた。


一年ほど前からは異母弟とその母である第三夫人をも抱き込んで協力を得ている。


そろそろ場が整いつつあった。


ーー奴らをいつ地獄へ叩き落とそうか……。


しかしその前に菫を安全な場所へ移したい。

異母兄サイドの罪を最初に白日の元に晒した時点で奴らは直ぐにレガルドを潰しに掛かってくるだろう。


もちろん命も狙われる。

それは少しも怖くはない。むしろ出来るものならやってみろと奴らの陣中に飛び込んでやりたいくらいだ。


しかし狡猾で小汚い奴らの事だ。

向こうは必ず真っ向勝負ではなくレガルドの弱点を突こうとしてくる筈。


レガルド唯一の弱点といえば………当然、菫である。


今のうちに菫を何処かへ……出来ればアデリオール辺りにでも避難させておきたいのだが……。


レガルドと従者の桐生のみが動いていた時はこちらの動きを気取られるようなヘマはしなかった。


が、異母弟も巻き込み、他の人間も動くとなるとさすがに異母兄側()も何かを勘付いたようなのだ。

こちらが向こうを監視しているように、間違いなく向こうもこちらを監視しているだろう。



ーー俺が接触して菫を動かせば、近々何か事が起こるのやも知れぬと警戒心を抱かせてしまう。それではやり難くなるかもしれないな……。

かといって二人分の転移魔法で海を越えられる自信はないし。


菫を州都から動かす何か良い口実はないか。



そしてレガルドが考えを巡らせている時、丁度良い事に父親から縁談を申し付けられた。


ずっとはぐらかして来たのだがとうとう父親が強行に出たのだ。


拒否権はない、否と言えば家門から追放するとまで言われた。


上等だコラ゛!!

と、言ってやりたかったが、まだ目的は達成されていないので、今はまだ李亥の次男という肩書きは捨てられない。


それにこれは利用出来る、縁談の相手である北の豪族の長は要するに娘を州主の息子に嫁がせれば相手が何番目だろうが良いのだ。

いずれはまだ許嫁の居ない異母弟に押し付け…ゲフン、譲ればいい。


事が上手く運べば異母弟が次期州主だ。

向こうにとってもいい話だろう。


この縁談を菫を逃す手立てとして使わせて貰う、レガルドはそう決めた。



それから直ぐに父親はレガルドと北の豪族の娘との縁組を大々的に報じさせた。


きっともう菫の元にも知らされているだろう。


ーーうっ……菫ちゃん……!

彼女の事だ。

きっと俺の今後を考えて身を引くべきだと考えるはず。


そしてやはり、菫が熱心に渡航記や移民の備忘録などの本を読んでいたと妓楼から報告が上がっている。

間違いなく菫は国外へ行く、レガルドはそう確信していた。


それならば元々菫と移住しようと思っていたアデリオールへ誘導すればいい。


ーーハルジとポワンフルさんに頼もう。


レガルドは忙しい中、何度もアデリオールまで転移し、二人に会って事情を話して協力を願い出た。


幸い友人のハルジオも下宿先の大家だったミス・ポワンフルも菫の保護を快諾してくれた。


そこまでの根回しが済んだ時点でレガルドは菫を身請けして他所へ移す旨の文を(したた)めた。


敢えて端的に。

感情が篭らないように冷たさを纏わせて。


レガルドは目頭を押さえながら筆を動かす。


ーーうっ…菫ぇぇ……こんな書き方じゃあ妾にすると言ってるようなもんだよなぁぁ………。



でもこれで菫は自らの意思で出国してくれるだろう。


必ず出国する選択を菫に取らせるよう、念のために桐生には全て伏せた上で菫の送迎をさせる事にした。


案の定、桐生は俺が菫を妾にすると思い込み、そしてそれを菫が受け入れたように考えている。

あいつは俺の立場を考えて是としないだろうからきっと菫にもその事を伝えるに違いない。


そして菫が出奔しやすいように率先して取り計らうだろう。


異母兄の手の者が二人を追尾するだろうが、桐生に注意を引き付けておく事も出来る。


その間に菫は国を出られるわけだ。


ーー我ながら(こす)いな~


しかしあまり時がない中、これが一番効率が良いのだ。


ーー俺一人何度もアデリオールに飛んでヘトヘトだけども。


そうしてレガルドは菫が自ら行方を眩ませるようにさせ、異母兄側の監視の目から逃れさせた。


菫が服用した異能を消す薬も奴らから上手く身を隠すのに功を奏している。


そして港でミス・ポワンフルと出会い、アデリオールへと旅立つ菫を、こっそりとレガルドは見送った。



ーー全部片付けて、俺も行くからな。待っててくれ菫。




これで完璧に舞台は整った。



一気に方を付けてやる。




その日から数日後にレガルドは異母弟と共に李亥の嫡男の罪状を掲げ、反撃の狼煙を上げた。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




裏で暗躍していた若君の独白はこれにて終了です。


この後の事は菫と一緒にレガルドから説明を受けましょう!

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