入省式
こちらの更新うっかりしてましたΣ(゜д゜lll)
遅くなってごめんなさい!
朝、玄関先で行き交ったハルジオが手に持っていたらしい紙を落としたので、菫はそれを拾いながらハルジオに声を掛けた。
「ハルジオさん、何か落とされましたよ」
「あ、ごめんありがとう」
慌てて紙を受け取ろうとするハルジオにその紙を渡す時にちらりと“コードネームお花ちゃん”と書かれているのが見えてしまったが、菫は素知らぬ顔をしておいた。
きっとプライベートな事だろうから、
それを見てしまって申し訳ないと思ったからだ。
そんな菫にハルジオが言う。
「スミレさん、昨日は帰りがいつもより遅かったんだね」
「ええ。明日行われる入省式の準備のお手伝いをしていて遅くなったんです」
「連絡くれたら迎えに行ったのに。夜道の一人歩きは危ないよ」
「ありがとうございます。でもまだ人通りが多い時間でしたから」
「人通りが多い方が危ない場合もあるよ?スミレさんは綺麗だから、良からぬ事を考える野郎がその分増える確率が高い」
「大袈裟ですよハルジオさん」
「いや、実際に大袈裟じゃないし、君に何かあったらこの辺一帯が焦土と化すから……」
「ええ?」
朝から難しい冗談を言うのだなと感心しつつ、菫は明日の事に触れた。
「ハルジオさんも入省式に出席するんですよね。明日から立派な魔法省の正職員さんだもの」
「うんもちろん。魔術学園からの同級生も何人か入省するんだ。スミレちゃんは式には?」
「私は訓練日の課長にお供する事になってるんです。ついでに私も訓練するようにって。それから課長がちゃんと訓練するか見張っていて欲しいと他の職員さんに頼まれて……」
「あはは。特務課の課長さんて、なんか面白そうな人だね」
ハルジオが笑いながらそう言った。
そして翌日、真新しいスーツの上に真新しい魔法省のローブを羽織ったハルジオが誇らしげに王都にある本省の門をくぐった。
新職員が集まる講堂へと入ると、
ハルジオの目にとある人物の姿が飛び込んで来た。
ハルジオはその人物、長身で黒髪碧眼の青年の元へとゆっくりと歩み寄り、そして声を掛けた。
「………よぉ。来たな。もう全部済んだのか?」
その青年はハルジオを見て柔らかく微笑んだ。
「よおハルジ。色々と済まなかったな」
「いや、それは全然構わないよ。ミス・ポワンフルもそう言っていた。……もう彼女には会ったのか?」
「まだだ。式が終わったら速攻で拐いに行く」
「物騒な事を言うなよ。まぁお前が惚れ込むのは分かるが……」
「だろ?カッワイイんだよ、俺のお花ちゃんは」
「コードネーム“お花ちゃん”、本当にいい子だ」
「惚れるなよ?お前も少しは女を見る目を養え?」
そう言って青年は少し離れた所で他の新職員たちと集まって談笑している一人の女性を見た。
その方向にハルジオも視線を移す。
「………女って、みんなリッカみたいなタイプだけだと思ってたんだけどな。みんなおんなじだと」
「そんなわけねぇだろ。そんな世の中嫌だわ俺は」
「………ふむ……」
それから少しして、
今年度の魔法省新職員の入省式が執り行われた。