09「呪いの貞操帯」
「俺の身体はボロボロだ!」
ああ、クソッ垂れ。
褐色の爆乳ダークエルフは魅力的だった。
だが、こんな状況に追い詰められるぐらいなら、ダークエルフに対して抱いていたトラウマなんて克服せず、あのままダークエルフを近寄り難い存在として見ておけばよかった。
無論、そんな彼女と究極合体した僕が悪いのは間違いない。
ライムグリーンのマイクロビキニからこぼれ落ちる褐色の爆乳。全てを飲み込むような爆乳の谷間に存在する魅惑的な深淵。スナック・ラプラスでロビンさんとした『あっち向いてほいっ!』を魔改造した淫乱なゲーム。
そして転生する前も行ったことがなかった風俗店の雰囲気。そこでしか味合えない様な性が乱れた空間。ラプラスと同じビルに備えられた宿泊所で、ロビンさんと過ごした淡い思い出。
どれもが背徳感を味わう濃密な時間だった。
だが、僕は今後、何があってもその濃密な空間を味わう事ができない。しかし、そこで培ったテクニックは、僕を更なる男へと進化させてくれた。
僕はロビンさんと肉体関係を持ったことにより、褐色の爆乳ダークエルフに対してのトラウマを消し去る事ができた。だが、その一夜で過ごした淡い思い出の代償はとてつもなく大きく、僕は妊娠した三人の彼女と一匹のホムンクルスによって、四面楚歌の状況へと追い詰められてしまった。
逃げ場なんてない。いや、逃げるつもりもない。
僕は大きな罪を犯したことにより、それに見合った正当な罰を受ける義務がある。
なんて事を考えながらも、食堂の扉が刻々と破壊されていくなか、褐色の爆乳ダークエルフ改め『ロビン嬢』との淡い思い出が脳裏を過った。が、その直後、食堂の扉は死神や凶暴な野獣と化したヤンデレライオンが握り締める真鍮製のスタッフと、大口径の蒸気機関銃をぶっ放したムチムチの女隊長によって粉々に粉砕された。
ロータスさんは食堂に入るや否や僕が与えた大口径の蒸気機関銃を僕の顎に押し付け、リベットは憎悪と愛情が混濁した笑みを浮かべながら僕の元に近づき、アクセルJrの素を精製する睾丸をギュッと握り締めてきた。
「今回ばかりは正直に話しても許してあげないからね、アクセルくん。今年の黒議会で何が起こってオーガ族の女性を孕ませたのかな? 私っていう獣人族の彼女が居るのに、どうしてアクセルくんの煮えたぎった性欲は他の女性を傷つけちゃうのかな? もしかして……私にアクセルくんの性欲を満足させられるテクニックがないから、他の女……いや、私と同じ魔族の女性を孕ませちゃったの?」
と言ったリベットは、僕が履いたズボン越しに睾丸を握り締めた。
「アクセル、今年の黒議会で何が起こったのかは分からないけど、貴方が何処かのプロの女とヤッタのはエイダさんから聞いてるわよ。ヤッた女の社会保障番号と違法風俗店の住所を教えなさい。その女は何があっても私の権力で存在ごと消し去ってみせるわ。何処にも逃げ場は無いわよ?」
と告げてきたロータスさんは、蒸気を噴出させた大口径の蒸気機関銃を床に投げ付けた後、治安維持部隊が標準装備している嘔吐棒の手元にあったスイッチを押して、嘔吐棒を電気が流れる状態の電気棒へと変化させ、ぶらんぶらんと振り回した。
「アクセル先輩。ここは観念して全て正直に話した方が身のためですよ? 確かにノアと一緒に貴方と3Pをしたのは事実ですが、あれは私とノアのちょっとしたイタズラです。ですが先輩は寝る間を惜しむ事もなく、ノアを孕ませる程の性欲を彼女にぶつけてしまったんです。それに、ルミエルさんの話によると、アクセルさんは九龍城砦に存在する風俗店で一発抜いてきたようじゃないですか。もしかすると、一発では済まないかもしれません。だって、アクセル先輩は最速の男ですからね!」
等とぬかしやがったエイダさん……いや、クソッ垂れのエリート爆乳ポンコツホムンクルスは、僕の右腕に爆乳を押し付けながら虚ろな眼差しで見つめ続けたまま、自身に向けられた愛情が真実なのか確かめるように、指先を僕の手のひらに絡め始めた。
「ダルク。私は貴様の事を勘違いしていたようだ。見た目は可愛らしい男の子だが、やはり貴様も立派な男であったようだ。何が起こって風俗店で女の体を貪ったのかは分からないが、それなりの理由があるからなのだろう。だが、将来の妻となる二人の彼女を妊娠させてまで風俗店で性欲を満たすなど、あってはならない事だ。しかし、ダルク。これからは何も心配しなくてもいい。私という強欲な性欲の塊であるオーガ族が妻になるんだ。私は何があっても貴様の性欲を発散し続けるだけのテクニックがある。ほら、アクセル。ヤリたくなったのなら、いつでも私の体を弄ぶがいい。私の胎は貴様のビリビリが付与された体液の感覚を忘れられないでいる。いつでもぶち撒けて構わないぞ?」
と言ったノアはエイダさんと同様に僕の左腕へと、肥えた爆乳と陰影のできた腹筋をこすり始めた後、身体が火照ったかのように頬を赤く染め、ハイライトが失われた瞳で僕の左目をじっと見つめてきた。
四人の将来の嫁さんは、互いに自分がどれだけ僕の事を想っているのか競い合っているようだ。
種族は違くても同じ魔族であったリベットとノアは、言葉にしなくてもチラチラと睨み合いながら『私が一番僕のことを愛している』といった殺気を漂わせ、リベットは僕の睾丸を更に強く握り締め続け、ノアは僕の左腕に肥えた爆乳を押し付けていた。
そしてエイダさんとロータスさんの二人。ロータスさんは、エイダさんがノアと僕が3Pを行わせた主犯格である事を知ったらしく、エイダさんに向けて「貴女は最強のホムンクルスじゃないわ。性欲の権化よ」と告げて睨み付けた。しかし、エイダさんは「これにはちゃんとした理由があります」と言い返して、ロータスさんの鋭い眼差しに対抗するように睨み返した。
「パンプキン。霊力をガントレットに注ぎ込め。今のうちに光学迷彩を発動する」
「申し訳ございません、ジャックオー様。貴方様は四人の彼女にキチンと事情を説明するべきです。光学迷彩の発動に制限をかけました」
僕はガントレットの甲に備えられたボタンを何度も押し込むが、パンプキンはガントレットの機能に制限をかけたらしく、姿を透明化させる光学迷彩は発動されなかった。
なんて野郎だ。御主人様が危機を感じているのに、この女はガントレットに制限を掛けやがった。
まさかパンプキンまで僕を裏切って四人の彼女の味方に着くとは思いもしなかった。
仕方ない。ここは観念して全てを話す必要がありそうだ。
「落ち着きましょう、エイダさん、ノア。それとリベットとロータスさん。僕が風俗店に行ったのはワザとではないんです。四人が納得できるように説明をします」
と告げた直後、僕の両隣に居たノアとエイダさんは、僕に肩パンや腹パンをキメてきた。そしてその直後、睾丸を握り締めていたリベットは手のひらに力を込めたらしく、僕の二つあるうちのJrの素を貯める貯蔵タンクの片方は握り潰され、袋の中で弾け飛んだ。
そして彼女たちの様子を静観していたロータスさんは、僕の顔面がパンパンになるほど殴り始めた後、「少しはスッキリしたわ。コイツを談話室に運ぶわよ」と他の三人に告げ、悶絶したままの僕を抱えて談話室へと向かっていった。
しかし、その道中、リベットは魔術学校で学んだ上位治癒魔術を発動してくれたらしく、治癒魔術の詠唱を詠みながら睾丸が入った袋を揉み続け、袋の中で弾け飛んだ睾丸を元の形に戻してくれた。
その後、屋敷に幾つか存在する談話室へと連行された僕は、四人の彼女に衣服を剥ぎ取られた。そしてロータスさんが何処から仕入れたのか分からないが、彼女は家族が団欒できる程の温かみがある談話室に、全く相応しくないX型の拷問器具を用意し始め、僕の腕や足を拷問器具に備えられた鉄製の手枷や足枷で縛り上げた。
巨大な屋敷には数十人がくつろげる程の談話室が用意されており、僕が運ばれた部屋はルミエルさんに作ってもらった場所でもあった。部屋の中央の奥には暖炉が設置されてあり、寝心地の良いソファや分厚い絨毯が敷かれている。
ロータスさんが趣味で集めた詩が書かれた本やリベットが買った魔導書、その他にもにポンコツホムンクルスが収集した音楽を再生する蓄音機などが設置されてあった。
彼女たちがくれたハート柄のトランクス一枚の格好にさせられたが、ドM紳士御用達のX型拷問器具に拘束された状態のまま、僕はニヤニヤと笑みを浮かべる四人の彼女たちの中からリベットに尋ねる。
「り、リベット。さっき、き、キ◯タマが破裂した気がする。そしてキンタ◯が元の形に戻った気もする。僕の気のせいか?」
「気のせいじゃないよ、アクセルくん。私は貴方の大事なキン◯マをちゃんと握り潰してあげたの。そして上級治癒魔術を使って一瞬で治してあげたの。これはアクセルくんが私以外の魔族を孕ませた罰だよ」
リベットはそう告げてきたが、トランクス一枚になった僕の睾丸を布越しで握り始めた途端、再び袋に閉じ込められた睾丸を握り潰した後、上級治癒魔術を使って睾丸を元通りに復元してくれた。
そしてそれを見ていたエイダさんやロータスさん、車椅子に乗ったノアは、婀娜たる笑みを浮かべながら、ロータスさんが用意した棒の先端に羽が付いた拷問器具を取り出して近づいてきた。
「な、何をしようとしているんですか、ロータスさん、リベット、それとノア――」
「黙りなさい、アクセル。ちょっとした罰よ。そう何度も睾丸を破壊されるのは嫌でしょ? ただでさえ睾丸は蹴られるだけで悶絶するくらいなのに、何度も潰されてばかりいたら本当に死んじゃうかもしれないからね。別の方法で虐めてあげようと思ったの」
と答えてくれたロータスさんは、棒の先端に羽がついた拷問器具をリベットに差し出し、不敵な笑みを浮かべながら羽を僕の体に擦り付けてきた。
や、や……ヤバい。頭がおかしくなりそうだ。
くすぐったくて堪らない。
睾丸を潰された時は確かに悶絶したが、これはこれで頭が狂いそうだ。
それに棒の先端に付いた羽には何らかの術式が込められているようで、四人の彼女が僕の脇や首筋、耳や足先に羽を擦り付けるたび、尋常じゃない程の快感が体の内側から押し寄せてくる。
「お、お願いします。ノアの事や風俗店での出来事を全て話すので許して下さい!」
と笑いながらも叫ぶと、ノアはX型の拷問器具に縛り付けられた僕の傍らに寄り添い、エイダさんやロータスさん、リベットの方に車椅子を向けて事情を説明してくれた。
「改めて自己紹介させてもらう。私の名前はノアだ。この名前はダルクに付けてもらった」
「初めまして、ノア。私はアンクルシティのダスト軍で働く治安維持部隊の隊長をしている、ロータス・キャンベルよ」
「こんにちは、ノアさん。私は貴女と同じ魔族で種族は獣人族。名前はリベット・ミラー・チェイスです」
「私はホムンクルスのエイダ・ダルク・ハンドマンです……といっても、ノアさんとは初めましてではないですからね。これ以上の自己紹介は意味がないでしょう」
等とノアが自己紹介を始めると、意外にもロータスさんとリベットは何の抵抗も見せずに自分の事を紹介してくれた。その後、ノアは自分がどんな境遇で過ごしていたのかや僕と出会った時の状況、そして自分がどうして奴隷商店で僕に買われたのかをキチンと説明してくれた。
「私は元々、奴隷商店で売られていた身だ。その前は幾つもの人間の性奴隷として飼われ続け、娼館でも働いた事がある身でもある。そして私の体を弄んだクソどもは、私に何度も覚醒物質を与え続け、更には私の両足と左腕を斬り落とした。そして使い古された私は奴隷商人に売り飛ばされ、死を間近にしてダルクに買われて命を救われた。それがダルクとの邂逅だ。私は最初、ダルクを他の人間と同じような存在であると見ていた。だが、彼は私の体を玩具にするどころか、弄ぶつもりもなかった。彼は両足と左腕を失った私に向けて『義手と義足を作ってあげたい』と言ったのだ。最初は上っ面だけの言葉を並べる人間だと思っていたが、黒議会の闘技大会で行われたダルクの勇姿や発言などを見定めた結果、私はダルクが真実を述べていたのだと知ることができた」
ノアは凄みを利かせた眼差しでロータスさんやリベット、エイダさんを睨み付けながら、自分自身が思った事を告げてくれた。
そして彼女は、自分が僕の子を身籠っている身であったとしても、ロータスさんやリベット、エイダさんの立場を尊重すると誓い、自分自身が行ってしまった行動を謝り始めた。が、僕は彼女の言葉を遮って話し始める。
「私はダルクに命を救われた身だ。しかし、貴女たちの許可を得ずに肉体関係を迫ってしまったのは私だ。貴女たちが望むのであれば、お腹の子は堕胎――」
「ノア! お前は何も悪くない。悪いのはお前じゃない。悪いのは僕だ! エイダさんやロータスさん、そしてリベット。ノアがどんな境遇で過ごしてきたとしても、彼女の誘いを受け入れたのは僕だ。責任は全て僕にある。エイダさんがイタズラで媚薬や精力剤を盛ったとしても、生物としての本能に抗えなかった僕が悪い」
と告げた後、僕は後天性個性の磁力操作で手枷や足枷を強引に解き、腕を組んだロータスさんやリベットに向けて頭を下げる。
自分が孕ませた女性に謝らせるなど、男として物凄く恥ずかしい。
謝るのはノアではない。絶対に僕だ。
「ノアに義手や義足を作ってあげたいと思ったのは本当だ。僕は死を間近にしたノアを放って置けなかった。ロータスさんやリベットが僕の勝手な行動を許せないのは十分に理解している。僕を憎んでも構わないし軽蔑しても構わない。だけど、ノアとノアのお腹にいる子供の事だけは受け入れて欲しい」
「アクセルはそう言ってるわよ、リベット。私は何があっても彼を許してあげるわ。だって、私はそれだけアクセルを愛しているから。そしてノアの事や彼女のお腹にいる子供の事も許してあげる。アクセルは人の命を救っただけよ。だけど貴女はどうするの?」
「……アクセルくん。貴方の事やノア達のことを許してあげても良いよ。だけど、これから生活していくに連れて一つだけ条件があるの。それを誓ってくれるのなら、今回の行いは大目に見てあげる」
と告げてきたリベットは、学生服のポケットから貞操帯を取り出して、僕にそれを装着するよう言ってきた。
「…………貞操帯か。予想はしてたけど、普通の貞操帯じゃあなさそうだな」
「うん。これはただの貞操帯じゃなくて、前々からロータスさんと一緒に着けさせようと思っていた特別な魔導具の貞操帯なの。アクセルくんには、常にこれを着けてもらう。そうじゃないと……私は不安だから」
銀色に輝く貞操帯は魔導具であるらしく、リベットとロータスさんの説明によると、僕が装着しなければならない貞操帯には尿を錬成水に浄化する仕組みや性欲を高める効果が付与されているとのこと。
この貞操帯は聖人族を対象にして開発された物ではなく、ダスト軍が拘束した反政府組織の構成員、特に凶暴な魔族に向けて開発された魔導具であったようだ。ロータスさん曰く『この貞操帯は凶暴な魔族を大人しくさせる為の拘束具であって、装着している限りは誰とも肉体関係は持てない代物』であるらしい。
僕のアクセルJrが元々小さいお陰なのか、貞操帯を身に着けてもそんなに苦痛を感じることはなかった。
何だかんだ言って、二人は優しい女性たちなんだな。と思っていたが、ロータスさんやリベットが同時に『お仕置きタイム!』と叫んだ途端、僕のアクセルJrと貯蔵タンクは貞操帯の魔導具によって締め付けられた。
「お、お前ら……これはただの貞操帯じゃないぞ。これは呪いの貞操帯だ……いや、超特級の呪具だ……」




