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第97話:単なる友達

「桜川さん、初めまして。こいつの姉の美代です。お義姉さんって呼んでいーよ」

 開口一番に放たれた姉の軽率な発言に、桜川さんは照れて、僕は激怒した。メロスじゃないんだから、激怒させないでくれ。僕は眉をひそめつつ、姉に耳打ちする。

「……だから彼女は、単なる友達なんだって。変なこと言って彼女を困らせないでくれ」

 へーへー、と適当な相槌をしてから、姉は桜川さんに、したり顔で言った。

「それにしても、いい名前だね。特に『サクラ』の部分が、今の状況にぴったりだ。寒空の下で路上ライブデビューを果たす我が友人に、せめて温かい声援を送っておくれよ」

 桜川さんは、その言葉にこくりと頷く。彼女が手に持つのは、姉が持参したサイリウム。スイッチを押すごとに色を変えるその光る棒を、驚きながら眺めている。

「……あんたこそ、大切にしなよ。単なる友達の姉の友人なんて奴の路上ライブを、わざわざ電車に乗ってまで見に来てくれるような子、そうそういないと心に刻みなさい」

 そこに関しては、完全に同意だった。桜川さんが、クラスで孤立していた僕の友達でいてくれたからこそ、僕はあの半年間を乗り切れたのだ。そして進級して同じクラスになった今でも、良い距離感でいてくれる。そのことが、僕にとってはとても大きかった。

「……分かってるよ。彼女は大切な人だ」

 演奏中に盛り上がってチューとかすんなよ、と茶化す姉に、しないわバカ、と返した。

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