第94話:ここで会ったが十五年
「ここで会ったが十五年!レジェンド芹沢──最強の座を賭けて、いざ勝負!」
なんて言えたらよかったんですけどね、と私は箸で持った少量のラーメンを、ちゅるちゅると啜る。少食の両親から生まれた私に、急に覚醒する大食いの能力などなかった。対面する芹沢さんは大人の色香を漂わせながら、私が持参した写真に目を落とす。
「あはは。私、若いねー。れんげちゃんも若ーい」
「若いというか、ベイビィですよ。五指にも収まる年齢ですよ」
写真に写っていたのは5歳の私と、私のパパとママ。そして二十代前半の芹沢さん。
「『ここで会ったが』よりも、『あの時駄々をこねていた鶴です』と言うべきでしたね」
その写真を撮影した場所は、私が『大盛りラーメンを食べる』と駄々をこねたという旅先のラーメン屋。少食一家の危機を、その界隈では有名人である芹沢さんに救って頂いた。記念写真というファンサまで貰った。私の個人的なお礼のために県外まで車を出してくれた叔父さんには頭が上がらないし、本当に私は色んな人に助けられているなあ。
「ここは私に奢らせてください。そのためにバイトで、お金を貯めたので……あちっ!」
「あはは、ゆっくり食べたらいいよ。私は大食い専門で、早食いが好きなわけではないからね。それにお礼は、ラーメン一杯分でいいよ。二杯目以降は自分で払うからさ」
未来ある若者を破産させるのも酷だしね、と芹沢さんは大人の色香たっぷりに笑った。




