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第92話:恋愛偏差値

 昼休み。仕事のことを相談しようと探していた同僚の姿が、見当たらなかった。

「あいつなら、高科先輩とランチに行ったよ」

 辺りを見回す俺を見かねて、同僚の神田が平坦な声色でそう言った。最近、同僚の男が女性の先輩といい感じだ。何度も恋愛相談を受けていた身としては嬉しい限りである。まあ俺の恋愛偏差値は普通に低いから、ちゃんとしたアドバイスを送れた保証はないが。

「あいつ、二年以上も高科先輩にぞっこんだもんな。友人の恋は応援するが、独り身の俺からすると寂しいぜ。あの神田くんすら、最近は年下の彼女に夢中だもんなー」

 俺がそう言うと、神田は怪訝な表情を浮かべた。スキーのジャンプ台と見紛うほど眉毛が吊り上がっている。慌てて目線を手元のスマホに逸らすと、都合よく着信があった。

「お、丁度友達から合コンの誘いが。相手は女子大生だって。うひょーやったぜえー」

「その割にはなんか、無理やりテンションを上げている感じだな」

 正直、期待よりも不安の方が大きかった。女子大生と上手く話せる自信が全くねえ。俺の恋愛偏差値が高ければ、あの日の夜に出会った、道端で号泣する女の子も上手く励ませたんだろうな。であれば俺も、バスソルトを押し付けた不審者にならずに済んだだろうに。そういえばあの子も、女子大生ぐらいの年齢だったか──まあこれも経験かと思い、俺は友達に出席の旨を伝える。恋愛偏差値が低いのなら、勉強するしかあるまい。

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