第87話:危なっかしい彼女
「あー、西さん見ーっけ! 今日こそ私を逮捕してもらいますよ! 西さんの手錠で、私をあなただけのモノにしてください! 西ノ宮みや子になる準備は出来てます!」
「……犯罪者じゃない君を逮捕は出来ないし、僕の姓を君と共有するつもりもないかな」
「犯罪者ではない私は逮捕されない──私のハートはずっと前に西さんに盗難されている──ハッ!? 私が西さんを逮捕した方がいいですか!? 高根沢卓になりますか!?」
ちょっと黙ろうか、と両手の平を見せて、僕は彼女を制す。通行人からの視線が痛い。
「君が高校生の時からの付き合いになるけど、君はずっとそのままだね。みや子ちゃん」
「そちらこそ! 私が社会人になっても、西さんはずっと社会人のままじゃないですか」
そりゃそうだろ、と僕は呆れた。初対面時より髪が伸びて大人っぽくなっても、危なっかしいところは変わらない。そんな彼女を見ていたら、ふいに「あ」と思い出した。
「そういえば最近、この辺で不審者が出るんだけど……捕まえようなんて思わないでね」
「心配してくれてます?いやーん、優しい。優しさの塊。そして何より好青年。最高&サイ・ヤング賞。まだ西さんは独身とのことですし、今のうちにツバ付けとこうかな」
そう言って彼女は投げキッスの仕草をした。そのぎこちなさから、彼女が魔性の女でないことを悟る。多分ドラマの真似事だ。そんな一挙一動からも、彼女に対するドキドキした気持ちが湧いてしまう──あくまでも、一般市民を守る立場の人間として、ね?




