第84話:あの日々
九一郎くんは要領が良く、手先の器用な子だった。私が任せた単純作業を高水準でこなしてくれるし、画材の扱いにも長けている。さすがは文具店の息子と言うべきか。
文句の付けようがなく、とても助かっている──助かっている、けれど。
「あの……、九一郎くんって、お友達とか、いる?」
彼が漫画の手伝いに来るようになって、二ヶ月。最初は週一で、学校がない日だけだったが、今では平日含め週四ペースで来てくれる。それは本当にありがたい。しかし彼は大人びて見えるとはいえ(初対面時は中学生かと思った)、まだ小学五年生の男の子。学校帰りにお友達と遊びたいのではないだろうか──と思っての質問だった。……だが、私は言ってから、失礼なことを聞いたと気付く。うん、失礼過ぎるな。私のアホ。
「親友と呼べる奴が、一人だけなら。でも気にしてないですよ。群れるの嫌いだし。ここには俺の意思で来てるので、気を遣わないで下さい。貴子先生の手伝い、楽しいので」
だが九一郎くんは何でもないようにそう答え、作業に戻った。本人もそう言ってくれていることだし、彼の好意に──十四歳も年下ではあるが、甘えることにしよう。
「九一郎くん、プリン食べる?」
「俺はプリンしか食べませんよ」
なにそれ、と私が笑うと、九一郎くんも頬を緩めた。




