第82話:電子レンジでさつまいもを温めるな
白物家電のコーナーで俺は溜息を吐いた。その理由は、想定外の出費によるものだ。
「はあ……。まさか電子レンジでさつまいもを温めたら、爆発するとは……」
己の無知を恥じつつ、そういうことを学校で教えてくれよと思う。いや、もしかしたら家庭科とかで教わったかもしれないけど、言うならもっと声高に言ってくれ。『電子レンジでさつまいもを温めるな!! はっ倒すぞ!!』ぐらいにさあ。昨日の夜、『あったけえさつまいもが食いてえな。ちょうどこの前買った残りもあるし、レンジにぶち込んじまえ』という思考回路を作り上げたほろ酔い気分の俺が、今はもう懐かしいぜ。
「……つーか、火災事故とか起こさなくてよかったよな、マジで。電子レンジの買い替えだけで済んだことを安堵しよう。そうしよう」
他人に損害を与えていたら、と考えるとゾッとする。警察懲役賠償金なんて恐ろしい言葉が頭を駆け巡る。そして仕事も家も友人も恋人も無くなり──いや恋人はいねえけど──そんな最悪な想像をかき消すために、俺は早々に予算内で収まる電子レンジの購入と郵送手続きを済ませた。さらに気を紛らわせるために、他に買い物がないか考える。
「あー、そういや色々買うもんあるなあ……。しゃーねえ! せっかくの休日だし、全部まとめて済ませっか!」
から元気を振り絞り、俺はデパート内を歩いた。




