第80話:私の足で、行きたい所に
見せたい物がある、と言い出したりーちゃんに連れられ、私とみや子は学校帰りに彼女の家に来た。彼女が玄関から持ち出したのはやけに細くて、荷台のない自転車だった。
「これを買うためにバイトしてたんだ! 最近、あんまり遊べなくてごめんね」
なるほど。最近、部活にも顔を出さず、やけに忙しそうにしていたのは、このためだったのか。りーちゃんはみや子の方を向いて、嬉しそうに言った。
「前にみやちゃんが言ってた言葉に、感化されたんだ。私もみやちゃんを見習って、憧れの人の心を射抜くために、直接的な弓矢で、直接的に射抜くことにしたよ」
それを聞いたみや子は「いや、その、あれは、ものの例えで」と珍しく狼狽えていた。どうやら二人の間で、なんらかのやりとりがあったらしい。詳しく聞くと『憧れの人に直接的なアプローチをするために会いに行く』という話だった。
「私が無知だっただけで、九一郎にーちゃんはギリギリ同じ県に住んでるみたい。昔から『遠い親戚』って聞かされてたから、無意識に年中行事じゃないと会えないって思い込んでた。でも、違った。頑張れば会える所にいた。そのために私は、本格的な自転車を買ったんだよ。私の足で私の行きたい所に行くの。その決心を二人にも見てほしくて」
彼女が口にした地名は確かに県内にある。だが、自転車で行くには遠い。でも、彼女の目は本気だった。私とみや子は迷わず、大切な友人の誓いに、心からの応援を贈った。




