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第8話:下方比較

 気が重い。まあ私のような凡庸な中学生の気が重くなる理由は、私と同じように凡庸なものである。勉強か、部活か、恋愛か。大体その三つだ。私も例に漏れず、その全部に悩んでいる。今は時期的に『勉強』のウエイトが大きい。返却された期末試験の回答用紙に書かれた数字を思い出して、私は深くため息を吐いた。

『今回はちゃんと勉強してきた。良いことがあったからね』

 前の席に座るあの子は、いつもそんな調子の良いことを言って、平均点を割るような不器用な子だった。『全然勉強してないよー』なんて言いながら、いけしゃあしゃあと高得点を取る人とは、真逆のタイプ。正直に言って、見下していた。こういうの、『下方比較』って言うんだよね。自分より下の人がいる、という安寧に浸ること。そんな彼女が今回の試験で、私の成績を大きく上回った。良いことって、何だろう。

 期末明け初日の部活でクタクタになった私は、癒しを求めてグラウンドを眺めた。私の『恋愛』部分をざわつかせる、サッカー部の足立くん。彼は部活が終わってからも、真剣な顔で居残り練習をしていた──きっと下方比較なんてしていても、成長なんてしない。成長するのは多分、足立くんやあの子みたいに、上を向いて頑張る人なのだろう。

 ……私も、何か頑張ってみよう。『勉強』か『部活』か、はたまた『恋愛』か。

 凡庸な私の凡庸な誓いを、沈む夕日が見守ってくれた気がした。

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