第79話:夜のファミレス
「──だからお前も、もっと頑張らないと。そんなんじゃ未来なんて変えられないぞ?」
ファミレスで食後のパフェを貪りつつ、耳の痛くなるありがたーい言葉を俺に送りつけてきたのは、この前まで俺のフリーター仲間だった奴だ。
「それはともかく、正社員様よぉ。二十二時なんて時間に晩飯食ってて大丈夫かよ。生活リズム的に。就職先は朝早いんだろ? 昼夜逆転は就業前に直した方がいいと思うぜ」
「余裕だな。仕事開始まで、あと一週間もあるんだぞ? なんだって出来るだろ」
就業初日に大遅刻でもかませばいいのに、と思いつつ店内を見渡す。若い女の子の店員が忙しそうに駆け回っていた。俺の視線に気付いたのか、対面に座る奴は言った。
「ほら、あんなに若い子だってこんな時間まで頑張ってるんだ。お前も頑張れよ」
「ひっでえな。そういう比較って、一番やる気を削がれるんだぜ」
それにしても今の店員、随分可愛い女の子だったな。どれどれ名札は、と──うーん、読めねえや。両サイドの『東』と『寺』しか分かんねえ。ずいぶんいかつい苗字だ。
「経済的に不安定なお前じゃ、あんな可愛い子は振り向いてくれねーぞ」
「うるせえわ。お前だって別に、裕福でもねーだろ。人の目の保養にまでケチつけんな」
その後も俺たちは店内で駄弁り続けた。俺も憎まれ口を叩いてこそいるが、じきにこいつも忙しくなるのだなと思い、少しだけ寂しく思った。




