第78話:冷え込む夜の街
「会社の新年会なんて、強要されなきゃゼッテー行かねえっすよ。俺みたいな下っ端、気ィ遣って何も楽しめなかったし。しんどいだけっすわ。係長も、そう思いません?」
居酒屋からの帰り道。同じ駅に向かう部下が、俺にそう同意を求めてきた。
「上司として今の発言は咎めるべきなんだろうけど、個人的には、まあ同意かな」
でしょでしょ、さすが係長は分かってらっしゃるー、と彼は調子づいた。
「でも、よかったじゃないか。ビンゴで商品が貰えてさ。当たったのは五人だけだぞ」
「そうは言っても、バスソルトの詰め合わせですよ? 風呂なんていつもシャワーで済ませるし、使い道ないっすよ。虚しい一人暮らしの男には不要でしょ」
そう言って、彼は大袈裟に肩をすくめた。そんな彼を見て、そういえば、と思い出す。
「昔お世話になった上司に、堀口さんって人がいたんだけどさ。その人すごく強運で、会社のビンゴ大会ではいつも良い景品貰ってたな。高級肉の目録とか、ゲーム機とか」
そんな人いるんすねえ、と彼は夜空を仰ぐ。その動作と共に、彼のお腹が鳴った。
「係長、今から飯食いに行きましょうよ。さっきは好きなもん全然食べられなかったし」
「俺だってお前の上司だぞ? 一緒に飯に行ったって、気が休まらないんじゃないか」
「係長は別ッス。俺は係長と一緒に、ファミレスでデラックスパフェを食いてーんすよ」
それなら行くしかないな、と俺は賛同した。冷え込む夜の街を部下とのんびり歩く。




