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第77話:備後

 スーパーのレジで受け取った福引券をひっそりと財布にしまっていると、福引スペースから身を翻した男の子とすれ違った。彼は手に持ったポケットティッシュを呆然と見つめていた。きっと落胆しているのだろう。その気持ちは分かる。私は福引が嫌いだ。当たった試しが無いから。特にビンゴ大会が嫌いだ。それは、私の苗字が由来だった。

『お前、備後(ビンゴ)って名前なのに、全然ビンゴしねーじゃん』

 小学生時代のクリスマス会で言われたその言葉を思い出すと、私の心は鬱屈とした思いで溢れた。あの日から、すでに数年が経過しているのに。私は人生の何事においてもビンゴを揃えられなかったし、そもそもリーチが作れないぐらい運に恵まれなかった。

「せめて私を、ビンゴの手前まで──リーチまで導いてくれるような人がいてくれたら」

 他者を導くのが生き甲斐みたいなプロデューサー気質の人に発掘してもらえれば、私だって輝けるはずだ。何か爆発的な成果を生める程には、私の想いは大きいはずなのだ。

「……なにそれ。そんなに上手くいくわけないじゃん。私の人生だよ?」

 根拠のない妄想は虚しくなるだけだ。そもそもプロデュースとはなんだ。こんな冴えない私が、アイドルにでもなろうってのか。そんな風に自嘲しながら歩いていると、近所の河川敷にたどり着いた。そして、気付くと叫んでいた。青春の大バカ野郎、なんて青臭い言葉を、人目も気にせず叫んでいた。私は──何者かに、なれるのだろうか。

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