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第76話:俺の手を握ってくれる君はもう、俺の横にはいやしないのに

「失恋で傷心中の男に、家のお手伝いなんか頼むなよ……おつかいなんてさあ……」

 そんな嘆きが、『初秋の候』と呼ぶにはまだ暑過ぎる空を駆ける。雷様より怖い母に直接文句を言えるわけもないので、独り言という体裁で抗議するのがせめてもの抵抗だ。

 俺はスーパーに入店した。しかしやる気は湧いてこない。面倒な現実から逃避するため、俺はひとまずアイスコーナーに向かった。涼まねーとやってらんねーぜ。しかしそこで目にしたのは、俺にとって因縁深い代物だった。カップに入ったトルコアイス。

「あそこで橋野にスマートに勝っていれば、美穂ちゃんにフられはしなかったのに……」

 あの日のことを恨めしく思ったところで、もうすでに俺の手を握ってくれる彼女はいないのだ。俺があの時、美穂ちゃんを放置して橋野とのバトルに興じなければ……。

 嫌気がさした俺は現実逃避先から逃避し、手早く買い物を済ませた。会計時、レシートと共に福引券を貰った。俺はそれを握りしめ、福引スペースに向かう。願いを込めて回したガラガラが吐き出したのは、ハズレを示す白玉。落胆する俺が景品のポケットティッシュを受け取ろうと手を伸ばすと、「ありがとうございました。また挑戦してくださいね」と優しい声を発した女性店員の左手が、俺の伸ばした手をそっと包んだ。そしてティッシュを持った右手を、そっと俺の手に置く。帰宅してから、俺は母に尋ねた。

「母ちゃん。次のおつかい、いつ行けばいいの?」

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