表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/105

第75話:佐野文具店

 気が付くと、私の顔の真横に女性の顔があった。その視線は私が試し書きコーナーに描いた落書きを見ていた。彼女は「あなた、漫画家さん?」と人懐っこい声で言った。

「い、いえ。ちゃんとした画材を揃えるのも初めてなレベルでして」

 聞くところによると、彼女はここ『佐野文具店』の店主の奥さんなんだそうだ。

「あなたならプロでやっていけるわよ。なんてったって、私のお墨付きなんだから」

 って私は一体誰なのよ、おほほ、と奥さんは上品に笑った。

「漫画を描くなら、アシスタントさんも雇われているの? 一人じゃ大変ですものね」

「い、いえいえ。自分なんて、まだそんな。駆け出しも駆け出しですし」

 それはいけないわねえ、と言った奥さんは、私の遠慮もお構いなしに、レジ奥の扉を開けて、上方向に叫んだ。誰かの名前を呼んだようだった。二階は自宅なのだろうか。

 現れたのは、中学生ぐらいの男の子。おそらくは、このお店の息子さんなのだろう。

「あんた、漫画とか好きでしょ。この先生のお手伝いをしなさい」

 私の遠慮も彼の意思も無視した軽過ぎる提案をした奥さんに、私は慌てて、自分の家が隣町にあることを伝える。決して徒歩圏内ではないことも、きちんと付け加えた。

「この前買ってあげたマウンテンバイクもあるし余裕でしょ! やるわよね、九一郎?」

 奥さんの理不尽な提案に、しかし彼は──九一郎くんは嫌な顔一つせず、頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ