第73話:ハンカチ
自動ドアを抜けると、ひやりとした冷風が身体を包んだ。自転車を漕いで火照った身体に贈る、至上の贅沢というものだ。やって来たのは、地元のショッピングモール。目的のお店に向かう途中、『いかにも』な服装に身を包んだ、同い年ぐらいの男の子とすれ違った。厨二、と呼ぶのだったか。その後ろを、お姉さんらしき人が歩いている。男の子を見るお姉さんらしき人の眼差しがとても優しげだったのが印象的だ。
「私にもお姉ちゃんがいたら、恋愛の相談とか出来たのかなあ」
ないものねだりはキリがないと思いながらも、私は妄想を膨らます。学年が二つ上だと、お姉ちゃんと同じ時期に学校に通えていいなあ。でもそれはそれで、なんだか緊張しちゃうかも? そう考えると年齢は三歳以上離れてた方がいいかな? もっといって、私の倍ぐらい──今私は十四歳だから、二十八歳のお姉ちゃん、とか。それだけ離れてたらゼッタイ喧嘩なんかしなさそうだなあ。などと考えているうちに、目的地にたどり着いた。中学生の私からすると少し背伸びをしたような、上品で洗練されているハンカチを取り揃えているお店。その雰囲気に、入店することを躊躇してしまいそうになる。
「……ついて来てくれるお姉ちゃんもいないし、私一人で踏み出さなきゃ。女は度胸!」
ないものねだりの妄想も楽しいけど、欲しいものは自分の手で掴み取らなきゃ。
そっちの方が、ゼッタイ楽しいよね!




