第70話:私の愛すべき友人
盤上の勢力には差があった。彼女が率いる敵軍はほぼ無傷で、対する私は王一人。『裸のキング』と呼ばれる状態だった。しかし勝負は最後まで分からない。諦めなければいつか、きっと──これから怒涛の粘りを見せようと思っていた矢先に、「チェックメイト!」という死の宣告が下された。彼女の駒が、私のキングの退路を断つ。かーっ、逆転とかムリムリ。そもそも私なんかが、特別な彼女を相手に逆転劇など起こせない。
「部内最強は伊達じゃないね、りーちゃん。今日のところは、この辺で勘弁してやらぁ」
私と同じボドゲ研究部に所属している隣のクラスの彼女は、私の負け惜しみに全く動じず「えへへ。ありがとうございました、ともちゃん」と可愛く挨拶をした。あの窮地から逆転劇を起こせる人間といえば、私の愛すべき友人・高根沢みや子ぐらいだろう。
「もしも私がみや子なら、残ったキングを手に持って、直接的に盤上を荒らすのになあ」
私の極端な例に、彼女は「確かに、みやちゃんならやりそう」と笑った。私の愛すべき友人・高根沢みや子は、とてもエネルギッシュだ。なぜかそのエネルギーを近所のパトロールに注いでいるけれど。でも私は、やりたいことをやり通すその姿に憧れていた。
「……ねえ。十回中一回でも私が勝てば私の勝ち、ってルールを思いついたんだけど」
その申し出に彼女はあっさり首肯した。特別な彼女たちのことは正直羨ましい。でも妬んでちゃダメだよね。凡人は凡人らしく、多少卑怯でも、私は私なりに戦い続けよう。




