第63話:キザな先輩
午後十時。バイトを終えて更衣室を後にした私は、大きくため息をついた。初めてのバイト、初めての土曜出勤、初めての八時間労働。カフェのバイトってキラキラしてて楽しそうだったけど、現実はそう甘くはなかった。つい半年前まで中学生だった私は両親に守られていたのだと痛感する。いつも遅くまでお仕事お疲れ様です。いやホント。パパ、今まで邪険にしてごめんね。パパの洗濯物も、一緒に洗濯機に入れていいからね。
「あ〜、タピオカ飲みたいなあ」
「世間では続々と新たなスイーツが流行してるのに、キミはブレないなあ」
無意識に宙に放った私の独り言をキャッチしたのは、従業員出口で待っていた二個上の先輩だった。彼は人差し指と中指を立て「よう」とキザな挨拶をした。そういえば夜道は危ないから、先輩に家まで送ってもらうって話だった。はっず、独り言聞かれた。
「世間の流行りなんて知りません!誰も私のタピオカ愛は止められんのですよ!」
恥ずかしさをごまかしたい気持ちも混入させつつ、私は本心を叫んだ。『第三次タピオカブーム』が過ぎ去ってからも、私はタピオカミルクティーを愛飲し続けていた。
「こんな時間にタピオカはやばいぞ? 明日でよければ付き合うぜ。奢ってやるよ」
先輩からの太っ腹な申し出に、私は「一生ついていきます♡」と大袈裟な返答をした。
……大袈裟ではあるけど、その言葉は嘘ではなかった──というのは、内緒の話!




