第61話:清々しい天気
「豆大福はこしあんでしょーが!?」
「は? つぶあんだろ。てめえ、舐めてっとブチのめすぞ」
長身で金髪でピアスを開けていてボーイッシュな服装に身を包んだ女子と、きれいめカジュアルなファッションの黒髪ロングの女子が、言い争いをしながら俺の前を横切って行った。二人のイケイケ女子に囲まれたおとなしめな服装の女子は、そんな二人を「まあまあ……」と、困った表情でなだめている。揉めていた二人が各々の口調で、彼女に『あなたはどっち派か』と問いかけた。
「わ、私……和菓子ってちょっと、あんまり得意じゃなくて」
言葉を選んだかのように慎重に発せられたその発言に、揉めていた二人が感情を爆発させた。『それは本当に美味しい物を食べたことがないからだ』と、各々の口調で。可憐な女子たちのそんな光景を見て俺は、仲良きことは素晴らしきかな、と一人勝手に得した気持ちになっていた。喧嘩をしていた仲の悪そうな二人が、休日に私服姿で集まっているのもいい。もう一人の子が、困りながらも笑みを絶やさないのもいい。誠に眼福だ。
「可愛い女の子たちが仲良くはしゃぐ姿も見れたし、こんな待ちぼうけも悪くないか」
左手に巻いた腕時計を覗く。待ち合わせ時間は、とっくに過ぎていた。さっきまで感じていた怒りはすっかり消えていた。俺は空を仰ぐ。実に清々しい、いい天気だ。




