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第51話:転校生

 同じ学年に転校生がやってきたらしい。

『らしい』という曖昧な表現を用いたのは、僕がその転校生を実際に目にしたことがないからだ。クラスも違えば科も違うし、教室の階層も校舎も違う。わざわざ足を運ばない限りは行かないような、そんな離れた場所にいる相手のことは、少なくとも僕のような消極的な人間には分からない。行ったところで、どうなるものでもあるまい。

「俺さあ、気になって転校生の顔を見に行ったんだけど、地味で大人しそうな女子だったぜ。一人でぼんやりと窓の外見てた。残念ながら、ラブコメは始まりそうにねーなあ」

 離れた場所にまでわざわざ足を運んだらしい、行動力のある友人がそう言った。

「高校の転校生ってあんまりいないって言うじゃん? だから漫画なんかでよくいる、特殊能力の一つでも持ってるすげー奴なんじゃねーのとか思ったんだけど、全然そんなことなさそうだ。かーっ、期待して損したぜ。俺の学園生活に嵐を巻き起こしてくれよ」

「フィクションでもあるまいし、転校生だからって、あんまり設定を盛ってやるなよ」

「俺に時を止める特殊能力でもあれば、数学の授業前で永遠に時間を止めるのによー」

「それだと永遠に帰れないぞ」

 そんなツッコミを入れながら、僕は数学の授業を受ける準備を始める。「ロマンがねーよなあ、ロマンが」という友人のぼやきを弾くように、チャイムが響いた。

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