第49話:終焉
「あああ! 終わる! 終わってしまう! 何がってそりゃ、夏休みがでしょ〜が!!」
山田のその叫び声は開け放たれた窓を抜け、爽やかな夏空へと溶けていった。俺はその様を見ながら汗を拭い、「クーラーつけねーか?」と彼に打診した。
「いや、うちは今日、電気代節約の為にノークーラーデーだって電話で言ったじゃん。それなのにうちに来たいって言ったのはお前じゃん。それを言うのはおかしいじゃん」
「そりゃあ、お前……。夏休みの最終日に、気の置けない親友の家で遊びたいじゃん」
山田は不意をつかれたような顔をして、「惚れさすなよ……」とわざとらしく両手で顔を覆った。数秒の間を置いて手を開いた山田は、落胆の表情を浮かべていた。
「それはともかく、夏休みが終わるぐらいならいっそ、俺がこの手で世界を終わらせてやりたいよ。こんな現実、間違ってる。だから俺がこの手で、終焉を迎えさせてやる」
「それもいいけど、まずはその真っ白な宿題を終焉させような」
俺が机上に積まれた宿題を指差すと、それを言うなって、と山田は肩を落とした。
「まあ、やれる範囲で手伝ってやるからさ。まだ時間は残ってるし、今から頑張ろうや」
お前は何度でも俺を惚れさせるなぁ、と言って俺への好感度を上げた山田に、再びクーラーの使用を頼んだ。が、「ノークーラーデーだから」と一蹴された。実情に反して愉快な言葉だなと思い、俺も「ノークーラーデー」と呟く。太陽は燦々と輝いていた。




