第48話:たちばなし
自分で言うのもなんだが、俺は実に面白い男だ。どんな場面だって、誰が相手だって、ユニークな言葉ひとつで盛り上げてみせる。
生粋のエンターテイナーかつ、極上のコメディアン。それが俺だ。
「やあやあ、橘氏! 暦の上では春だというのに今日も寒いねえ! これだけ寒いと、今年の夏は氷点下かな!?」
学校の廊下ですれ違った橘氏に、出会い頭に最高のユーモアをお届けする。彼があまりの面白さに吹き出してしまう想像をしてしまい、逆に申し訳なくなってしまうな。
「……隣のクラスの米田、だっけか。コメディアンを目指してんだかなんだか知らねーけど、『橘氏と立ち話』なんてくだらねー駄洒落を成立させるためだけに、大して仲良くねえ俺を呼び止めるな。俺とお前、友達でも何でもねーだろ。さみーのはお前だ」
しかし彼は俺の想像通りの表情を作らず、そう言い残して去ってしまった。
やれやれ、何が気に食わなかったんだろう? 俺はこんなにも、面白いのに……
「しかぁし! こんなことではめげないのが真のコメディアン!」
不機嫌な橘氏を笑わせるため、また廊下ですれ違った時は立ち話をして、今度こそ笑顔をお届けしよう。彼をハッピーにしてあげよう。
それが出来なければ、コメディアンとしての"立場なし"ってね?




