第40話:リマインド
『今日は用事を済ませたら、すぐに帰ってくること。寄り道は許さないから』
僕は彼女に信用されていない。だからこのようなリマインドメールが、頻繁に送られてくる。僕を責めるかのような冷たい文面だ。自分の彼女に信用されていないというその事実に、悲しくもなるぜ。仕事終わりの彼氏を、もっと労ってくれてもいいのに。
僕は用事を済ませた後、彼女の言いつけ通りにまっすぐ家に帰った。玄関扉を開けると、彼女が仁王立ちしていた。門番のように。「……ただいま」「おかえり」と手短に挨拶を交わしてから、僕は勇気を出して彼女に言った。
「なあ、僕もいい大人だ。そう何度もリマインドされなくても、ちゃんと覚えてるよ」
「ふーん。いい大人が、他人のプリンを勝手に食べちゃうんだ? 丁寧にも、律儀にも、ちゃーんとマジックペンで名前を書いておいた、限定販売の私のプリンを。人の物を取ったら泥棒であるということも、ちゃーんと覚えておいたら?」
「この度は誠に申し訳ありませんでした」
僕はすかさず、駅前の店で買ったスイーツ盛り合わせの箱を差し出した。土下座に近い体勢でその箱だけを掲げ、さながら王様に貢ぎ物を献上するかのような構図だった。
「仕方ないわね。今回の件は、これで手打ちにしてあげる」
僕は彼女に信用されていない。なんてことはない、それは妥当なことであった……。




