表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/105

第4話:ポップコーン

 胸熱かつ濃密な二時間を終え、館内が明るくなる。それを受けて、他の観客のほとんどが席を立った。彼らは一緒に来たツレと、映画の感想を話し合っていた。しかし俺は、そうはしなかった。なぜなら、お一人様だから。意見交換をしたいもどかしさを抱えながらも、俺は食べかけのポップコーンの容器を持って席を立ち、出口へ向かう。上映後にいつまでも館内に居座るわけにもいかない。出口までの動線に一組の男女がいて、それを煩わしく思いつつ「すいません」と前を通った。早く帰れよ、このリア充共が。

「……あ。もう出ないとっすね。いやー、放心しちゃってました……良すぎて……」

 俺の後ろでカップルの女の方が、そうこぼした。ツレの男もそれに同調する。カップルで映画なんて妬ましい限りだが、その気持ちに限っては同意だ。廊下に出て、スマホの電源を入れる。SNS上に短く『尊かった……』とだけ書いた。直接感想を語り合う相手はいなくとも、俺のSNS上にはたくさんのフォロワーがいる。続々とリプライが飛んでくるだろう。スマホを持つのと反対の手には、少し余ったポップコーンの容器。俺はそれを、じっと見つめた──このまま捨てるつもりだったが、そうはしなかった。

「お前を、ひとりぼっちにさせるかよ」

 映画に登場した台詞をマネしてから、俺は容器の中身を全て口に流し入れた。そしてゆっくり咀嚼を試みる。余ったポップコーンが独り者の俺と重なって見えたのは内緒だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ