第39話:しりとり
「ねえ、暇だからしりとりしようよ。それじゃー、私からね。りんご!」
ごはん、と彼は言って、優しく微笑んだ。
「やったー、私の勝ち! じゃあ二回戦ね! パスタ!」
ターバン、と彼は言って、穏やかに微笑んだ。
「あなたって、しりとり弱いのね。じゃあ三回戦! ハッカ!」
カルダモン、と彼は言って、さわやかに微笑んだ。
「……もしかしてだけど、わざと負けてない? さっきから、ちっとも続けてくれないじゃん。そーゆーのちょっと、アレだな。アレだよ。もっと私と、対等に向き合ってよ」
ちょっぴり拗ねながら不満を漏らす私に、彼はこう答えた。
『……ごめん。そんなつもりはなかった。可愛いキミを見ることだけに集中したくてさ』
彼が吐いたそのとびきり甘い言葉に、私はベッドの上でひとしきりのたうちまわった。「うぁぁ〜!」と、恥も外聞もなく転がりまわった。今の私の身体はきっと、体温計がエラーを表示するぐらい熱くなっていることだろう。しかし数分後──私は我に返った。
「……こぉ〜んな甘いことをささやいてくれる男なんて、この世にいねえよなあ〜!!」
私を甘やかしてくれる理想の男がこの場にいないことを乱暴な口調で嘆きつつ、私は妄想上で練り上げた彼氏とのしりとりを再開した。




