第38話:一瞬の輝き
白状するが、僕は今緊張している。心拍数は十五年生きた人生の中で、一番速いことだろう。普段人前に立つ人間ではない僕が、あろうことか、文化祭のステージなんて。
「澤谷、緊張してんのか?おいおい、らしくねーべ。おら、笑えや」
開幕前のステージ上で、ドラムを担当する友人が言った。彼は両手で自身の顔面を挟み、変顔を作った。ベースを担当する友人も、ひょうきんな彼に続いて言った。
「い、いい、いつもの澤っちらしくなくね? おつつけよ、いや、落ち着けよ」
僕以上に緊張している彼を見たら、思いがけずリラックス出来た。ありがたいことだ。
『えへへ、ごめんねぇ。私、バカだからさ。澤谷くんと同じ高校、多分行けない』
君が笑いながら泣いたあの日、気の利く言葉を言えなくてごめん。彼氏として、慰められなくてごめん。僕たちの関係がこの先どうなるか、今の段階では分からない。僕は真っ直ぐな君のことが大好きだけど、この恋が続かない未来だって、きっとあるだろう。
だから僕は精一杯、今の僕に出来ることをする。今確かに胸の奥で叫び声を上げている君への想いを、歌にして表現する。頑張るから聴いてほしい。僕はこの場所で、君だけのために愛を歌う。ステージに立つほんの一瞬の間だけ、君のために輝いてみせる。
「先生、一年間ご指導ありがとうございました。最後にどうか、僕に勇気をください」
明美先生に貰ったお守りを、ポケットの中で握り込む。そして幕が上がる。




