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第32話:そんなことを考えながら

 図書委員会終わり。私が『冬服のブレザー姿が素敵だなあ』なんて思いながら、隣を歩く三好くんと雑談していると、彼は話の流れで「うーん、無視されてるね。いやはや、参ったなあ」と言った。そんな台詞とは裏腹に、彼はあっけらかんとした様子だった。

「え……。そ、それって、大丈夫なの? その……、い……いじめ、とか」

「まあ、ちょこっと無視される程度だよ。幸いな事に他のクラスにも友達はいるし、こうやって桜川さんみたいに、心配してくれる人もいるからね。思ってたよりは平気かな」

 言葉や態度から察する限り、彼は強がりを言っている風ではなかった。それどころか、少し前までの彼と比べて息苦しさが抜けた気さえする。私だったらきっと、長いものに巻かれてしまうことだろう。三好くんはすごいな。そんなことを考えていると、彼は鞄から何かを取り出し、私に手渡した。それは以前、私が彼に貸したミステリー小説だった。

「それよりこれ、ありがとね。すっごく面白かった。さすがは桜川さんのチョイスだ。まさかあの、大量の犬たちがトリックに関わってくるとは思わなかったよ……」

 そして三好くんはいつものように、本の感想を語り出した。私も引かれない程度に高揚感を抑えつつ、相槌を打つ。私が彼にしてあげられることなんて知れてるけれど、せめて私とお話している間だけでも、嫌なことを忘れてくれたらいいな。そんなことを考えながら、色付き始めた木々を切り取る額縁のような窓が並ぶ廊下を、二人で歩く。

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