第30話:あかぬけ
「思ったんだけど、栗原ってさ。なんか垢抜けてるよね」
「あー。確かに、今日の服装は赤くないね」
ギター教室帰りだという大学の同級生・栗原は、カフェで向かい合う私が振った話題に脈絡の無い返答をした。会話の不成立を感じた私は、素で「は?」と返してしまった。
「え? 服装から『赤』が抜けてるって話でしょ?」
その天然が計算なら大したもんだわ、と私は呟く。なおも首を傾げる栗原に、私は懇切丁寧に説明した。彼女は「あー、『垢抜け』ね。知ってた、超知ってた」と言った。
「……そのふわふわちゃんなトコとは裏腹に、物事にさっぱりしてる感じ? 周りを気にせずやりたいことやってるその感じが、大学の男共を骨抜きにすんのかねー」
「んもー、美代ちゃん。骨なんか抜くわけないじゃん。それはグロいって。ヤダなぁ」
「……ともかく。アンタって昔からそういう、周りのことを気にしない性格なわけ?」
「んー。昔は、今より人の目を気にしてたかな──でも中学の時、周りに頑張ってる人が多くいてさ。私には何の取り柄もなかったけど、その人たちを見習って、興味を持ったことにはとりあえず挑戦しようと思ったの。まあ、熱しやすく冷めやすいんだけどね」
サッカー部の足立くんは今頃何してるかなー、と栗原は思い出したように言った。
私はコーヒーを一口啜り、大学で出会った友人の昔話に耳を傾ける。




