第27話:ビビってねーけど
「文末の波線が可愛いなあ!」という声が唐突に響き、俺はとっさにその声がした方を見る。学校帰りの中学生か。何やらはしゃいだ様子だが、急に大きな声を出さないでほしいものだ。いや別に、ビビってねーけど? ビビりじゃねーけど? 予想外のことって、驚くじゃん? 驚くとつい音がした方とか見ちゃうじゃん? お化け屋敷とかさ。
隣の中学生はその後もスマホに夢中な様子で、たまに先ほどのように、よく分からないことを口走った。変身したい、だとかなんとか。彼女の口が何か言葉を発するたびに、つい身構えてしまう。ビビってねーけど。つーか本当にこの子、さっきからどんなやりとりしてんだろ。まあ何でもいいんだけど。バス停にいるのが俺のような、温厚なおにーさん一人でよかったな、中坊よ。決して中学生相手にビビって注意が出来ないわけじゃないぞ。声を掛けて事案になるのを恐れているわけじゃないぞ。君を注意しないのは俺が温厚だからだぞ。しかしいくら俺が温厚でも、あまりにもうるさいようなら──
「はぁー、好きだぁ……」
誰にともなくビビリじゃないアピールをしていた俺をよそに、女子中学生はそう呟いた。その言葉を聞くに、どうやら青春のやりとりだったようだ。初々しくて、微笑ましいじゃないか。ここは温厚な年上のおにーさんらしく、注意するのはやめておこう。
決して、俺がビビりだからじゃないぞ?




