第26話:ヘンシン
私は非常にせっかちだ。先の展開が気になり過ぎて日常生活に支障が出るから漫画は完結済みの物しか読まないし、点滅している青信号にも突っ込んでしまう。とにかく前に進みたい。『次の金曜日、学校終わりに遊びに行かない?』と好きな男の子にメッセージを送った、今のような状況の時は特に。返信が来ない今の時間が実に焦れったい。まあそのメッセージを送ったのは二分前だし、無理はないかもしれない。『大抵の人はあんたと同じ体感速度で生きてないよ』と友達に言われたので知ってるのだ。むふん。
しかしせっかちな私は、もはや直接彼の家に訪問し、返事を聞きたい気持ちだった。走って行くと何十分かかるだろう。そんなに待てない。出来ることなら電車に変身して、『彼家駅』に直行したい。そして家の塀に突っ込んで──おっと危ない、勢い余って彼の家に激突するところだった。となれば飛行機に変身して、『彼家空港』まで飛んで行きたい。そして屋根の上に着陸──おっと危ない、勢い余って彼の家の屋根をぶっ飛ばすところだった。このままでは彼の家が危ない。せっかちな私をあまり野放しにしておくと危ないぞ──などとバカなことを考えていたら、スマホ画面を凝視していた私の目に『既読』の文字が表示された。数秒置いて、彼から『いいよ〜』と返信が来た。
「文末の波線が可愛いなあ!」
私がそう叫ぶと、同じバスを待っていた隣の人が虚をつかれたようにこちらを向いた。




