第22話:クールビューティー
何を隠そう、私はクールビューティーだ。人から「よっ、クールビューティー!」と言われたことはないが、私は私のことをクールビューティーだと思っているので、まあそうなのだろう。クールビューティーな私は、人前で涙を見せない。涙を流したのはこの世に生まれた時と、小学校・中学・高校・大学の卒業式の時ぐらい。あ、この前観た映画は泣いたなあ。あと子供が外で遊ぶ姿が尊くて泣いたっけ。あとこの前、シンプルに転んで泣いた。まあそれぐらいか。私はクールビューティーなので、あまり泣かない。
……でも愛犬のボーダーコリー、ボスティフが永眠した時は人目も憚らず泣いたな。もう三年になるか。昔、一度家から脱走したボスティフ。あの時は確か、どこかの学生が家まで送り届けてくれたのだったか。私が不在の時だから、母から聞いた話だが。
「……あー、無理。泣きそ。超泣きそ。クールビューティーだけど、例外的に泣こう」
愛犬の顔を思い出したことに加え、会社に行く前に朝食を食べていた牛丼屋で、突然泣き出した男性客を見たこともあるのだろう、私は時間差でもらい泣きをしてしまった。たまらず、目の前にあったコンビニに駆け込み、個室トイレに入る。泣きながらトイレに駆け込んだため、店員に『まさか、手遅れに……?』などと思われてしまったかもしれないな。うむむ。とにかく今は、この場で涙を抑えることに集中するしかない。
クールビューティーは、人前では泣かないのだ。




