第2話:ロイヤルミルクティー
「おはよう」
朝の昇降口ですれ違った彼女はいつもと変わらぬ笑顔で、僕にそう言った。同じ言葉を滑舌悪く、小声で返す。快活な彼女の笑顔とは対照的に、目も合わせられない陰気な僕。それも仕方のないことだ。言い訳がましいが、無理もない。
『気持ちは嬉しいけど、ごめんなさい』
僕は昨日、彼女にフラれているのだ。彼女が歳の離れた異性を長年慕っているという話はこの高校では有名だ。だからといって、彼女への想いは簡単には捨てられない。僕は今日も後方の席から、一番前の席の彼女を見つめる。僕の視界に彼女がいることを嬉しく思う反面、せめて彼女が僕よりも後ろの席なら授業に集中出来たのにな、とも思う。
放課後、コンビニに立ち寄った。彼女が愛飲するロイヤルミルクティーを手に取り、会計を済ませて外に出る。そんなオシャレな物は普段は飲まないが、少しでも彼女に近付きたかった。通行の邪魔にならない所まで移動して、キャップを外す。腕を腰に当て、口内に液体を流し込んだ。なんだかよく分からない味だった。
「あんまりよく、わ、分からないなぁ……ぼ、僕って、味音痴、なのかなあ」
美味しいのか不味いのか、それすらも判別がつかない。強いて言えば、涙の味がした。
人目も憚らず号泣する僕とすれ違いで入店した人が、僕を見て引いていた。