第17話:陶酔
「俺と、付き合ってください」
私の人生に、まるで絵空事のような、急転直下の展開が訪れた。あまりにも真っ直ぐ、あまりにも一直線に飛んできたその言葉を私は避けることも出来ず、「ひゃい」と情けなく頷くことしか出来なかった。恐らくは、顔と耳を赤く染めていただろう。
数回しか話したことがないであろう彼から「和泉がいつも友達と行ってる店、連れてってくれねえかな」と唐突な誘いを受けた時は、非常に驚いた。戸惑いながらも、私が通うアニメグッズ専門店に彼を連れて行った。店の空気に浮かれて一方的なオタクトークを繰り広げた帰りに受けたのが──まさかの、ストレートな告白。
しかし私は、恋愛がそう単純でないことを知っている。まあそれは体験談に基づく感想ではなく、アニメで得た知識なのだが。それに彼のようなスポーツマンと私みたいな芋女、長く続くとは思えない。きっと裏で『罰ゲームとして和泉としばらく付き合え』的なやりとりがあったに違いない。自分の中の冷静な部分では、そう思っていた。
……しかし、自分の中の大多数を占めるお気楽な部分では、分かりやすく浮かれ、陶酔していた。心が踊っていた。もしいつかこの恋が終わったら、『あの頃に戻りたい』と、今日という日を羨むのだろうか。まあでも、どちらでも構わない。
今はただ、初めて芽生えたこの気持ちを──ずっとずっと、抱きしめていたかった。




