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第15話:津波が私を飲み込む前に

 出来ることならここでセーブがしたい。そんなことを、天井の木目を眺めながら思った。枕に体重を預けた頭を、少しだけ右に傾ける。視界に入ったのは、棚のふちにハンガーで引っ掛けられた制服。明日から通うことになる高校の、制服──こうして一人になって考えてみると、私はかなり恵まれていた。両親は私の転校に反対しなかった。実家から遠く離れた地に住む祖父母も、私の居候を快く受け入れてくれた。私には逃げ場があった。恵まれているのだ。それでも私は、明日から始まる新生活への不安が拭えない。同じ失敗を繰り返すことを何よりも恐れている。目を閉じるとあの時の光景が、想いが、津波のように押し寄せてくる。私は逃げることも出来ず、その場に立ち尽くすだけ。だから今ここでセーブがしたい。津波が私を飲み込む前に。そして万が一あの時のように失敗してしまったら、電源を消してこの瞬間からやり直したい。ゲームのように。

「……お風呂、入らなきゃ」

 と口に出しながらも、体を起こす気にはなれなかった。実家から持ってきた秘蔵のお笑いDVDや大好きな漫画も、今日ばかりは私を元気付けてくれない。目を閉じると、引っ越し前に訪れた公園で出会った、小学生のことを思い出した。一人で佇んでいた姿を、私の境遇と重ねた男の子。身勝手な話だ。あの時は柄にもなく、喋り過ぎてしまったな。

 名前も知らないあの男の子は今、元気だろうか。

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