第14話:それはまるで綿菓子のような
夏休みが目前に迫る、七月中旬。恥ずかしい話だけれど、ぼくは最近、ある女の人のことばかりを考えている。先日この公園で出会った、高校生のお姉さん。
あの日のぼくはなんとなく家に帰りたくなくて、回り道をした先に見つけた公園のベンチに一人で座っていた。するとお姉さんが「ここ、空いてる?」とぼくの隣に腰を下ろした。お姉さんからはほんのりと、甘い香りがした。それはまるで、綿菓子のような。それからぼくは、お姉さんの話を一方的に聞いていた。ぼくは口数が多くなかったし、内容もよく分からなかったけど、何の反応もないのも悪いかなと思い、お姉さんを見て何度も頷いた。しばらくしてお姉さんは「ありがとう。バイバイ」と言って帰った。
ぼくは翌日以降も、その公園に通った。同じベンチの同じ位置に座った。偏見だけど、こんな風にベンチに座っていると、まるで『人生に疲れたサラリーマン』みたいだな、と思ってしまう。ぼくは図書室で借りてきた本を読んだり、宿題をしながら過ごした。
きっとぼくは、名前も知らないお姉さんのことを好きになったんだ。同級生の女子を見ても、こんな気持ちにはならない。でも、あのお姉さんのことを思い出すと、なんだか胸がきゅっとしてしまうのだ。そんなぼくの気持ちとは裏腹に、今日も夏らしい天気だった。空を漂う雲が、まるで綿菓子みたいだ。
どれだけ待っても、あのお姉さんは来ない。




