第12話:いつものように
「私ったら、今日は珍しく調子が良かったのよ」
ベッドで横になっているおじいさんは、傍に座る私の話に、にこにこしながら相槌を打ってくれます。いつものように、心がぽわぽわとするような優しい顔です。
「朝起きた時から、なんだか体の調子が良くて。不思議と気分も良くて。それで、いつもの喫茶店のいつものモーニングを頂いたら、年甲斐もなく何だかみなぎっちゃって。無性に、何か新しいことに挑戦したくなっちゃったのよ。それで柄にもなく、いつもと違う道で帰っちゃって。それでいつの間にか、道に迷っちゃったのよ」
おじいさんは、いつもの優しい声で「そうなんだね」と相槌を打ちました。
「うきうき気分だったものだから、思った以上に歩いてきてしまってね。困り果てていたのだけど、通りすがりの学生さんが声をかけてくれて。それで家まで帰ってこれたの」
大した面白味もない私の平凡な話を、おじいさんはいつものように聞いてくれます。
私はこの時間が大好きです。おじいさんが口を開いて、ゆっくりと言いました。
「それはとっても、素敵だねえ」
「そうでしょう? 素敵なのよ」
いつものようにおじいさんとお話しできる時間を守ってくれて、ありがとう。
天真爛漫なお嬢さん。




