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第11話:絵に描いたような

 高根沢みや子は遅刻が多い。それも際どい遅刻ではなく、二限、三限にまで余裕で食い込んでくる。中でも今日は歴代最遅の、四限の中盤辺りでの登校ときたもんだ。登校後すぐに昼食とか、良いご身分じゃないの。私の後ろの席で、持参した弁当を広げている良いご身分のみや子に、私は「……で。今日は、何をしてたんだっけ」と質問した。彼女は弁当箱の中身を確認して「ひょ〜、ハンバーグだぜ」と感嘆を漏らしてから、答えた。

「道に迷ったおばあさんを家まで送り届けた後、脱走した犬を飼い主の家まで送り届けて、人生に迷って公園にいたサラリーマンを職場まで送り届けてきたのさ、トモっち」

 まるで、絵に描いたような遅刻の言い訳だ。実際、それを聞いた先生も呆れていた。

 しかし私は知っている──それが、嘘ではないことを。

「つくづく思うけど、みや子。あんたってさ、絵に描いたような、まっすぐな奴だよね」

 私がそう言うと、みや子は何かを思い付いた顔をした。机の中からノートとペンを取り出し、さらさらと何かを描き始める。それを手に取り、私に見せた。珍妙な、タコの怪人みたいな絵だった。有り体に言えば、下手くそな絵だ。

「ご覧の通り、絵は描けないけどね。いやあ、才能ってのは遺伝しないもんだ」

 彼女の身を削ったユーモアにひとしきり笑った後、私は五限が美術であることを指摘した。「五限が終わってから来たらよかった」と、みや子は落胆した。

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