第10話:ヒーロー
挫折が恥だと、昔は思っていた。
アニメのヒーローはどんな逆境に立たされても、決して諦めたりはしない。それが正義だと思っていた。だから俺は、兄ちゃんにあんな酷いことを言えたんだ。
「一度これと決めたことを諦めるなんて、それでも男かよ」
中学二年でサッカー部を辞めた兄ちゃんは、そう言った俺を怒らなかった。少し寂しそうな顔をして「ごめんな」とだけ言った。
俺はそうはならない。そう息巻いた俺は、兄ちゃんの影響で始めたサッカーを辞めなかった──しばらくの間は。でも続けるうちに、自分には才能がないことを知った。
気が付けば、中学に上がる前にはサッカーを辞めていた。中二の夏に辞めた兄ちゃんより、ずいぶんと早い。そして俺は、何も持たないまま中学二年生になった。
「お前が輝ける場所が、きっとどこかにあるよ。僕はいつだって、お前の味方だから」
兄ちゃんはいつも、優しさで溢れていた。思い出の中の兄ちゃんは、常に笑顔だった。それが俺の精神的な支えになっていたと後になってから気付いたものの、兄ちゃんは今年、東京の有名な大学に行くために家を出てしまった。
「……兄ちゃん、ごめんよ。謝るから、謝るからさ──帰ってきてよ」
兄ちゃんというヒーローを失った俺が輝ける日は、本当に来るのかなぁ?




