木の下で
うちの学校には校門の前に針葉樹が一本生えている。その針葉樹は一年も経たないうちに枯れることで有名であり、僕らが入学した年も11月ごろに植え替え工事が行われた。
僕らが2年生になったある夏の夕方。友達のMが針葉樹の前でうずくまっていた。
「大丈夫か?」
と尋ねMの顔を覗き込むと、軽い貧血とかそういうレベルではないと素人目でわかるほど青白い肌をしていた。
「…ぁ、ぁ、ぁぁ」
か細い呻き声が口から漏れ聞こえる。僅かに見える充血した目はギョロリと僕を睨みつけた。僕はどこか異様な光景に息を呑み、すぐさまMの親に連絡を取った。
その後2週間ぶりに学校に登校したMは異様なほど痩せこけていた。Mは「これでも良くなった方」と笑うが、どこか元気がない。しばらくするとMはポツリと話し出した。
「住職さん曰く、生霊が取り憑いているんだってさ」
と。その上、生霊は無理に祓うことは出来ないらしい。
「生きている人に影響が出るから、ゆっくり祓うしかないらしい」
こうしてMは数年かけて徐々に生霊を祓いましたとさ。めでたしめでたし。と言いたいところだが、この話には続きがある。
その年から僕らが卒業するまで、針葉樹が枯れなかったのだ。後輩の話によれば、僕らが卒業した後も針葉樹は枯れていないという。
だが、数年経ったある日。偶然学校の前を通り掛かる機会があった。その時ちょうど針葉樹の植え替え工事が行われている最中だった。
「ああ、おかえり」
これは先輩から聞いた母校の話