大司祭封じ
砦を取り戻したことで、俺は参謀として認められた。ただし、また準備が出来れば攻めてくるだろう。それに備える必要がある。そして、軍が失敗した以上、勇者パーティーの誰かが来る可能性が高い。勇者パーティーは年に数回、パーティーとして行動することが決められているだけで、基本は各自が別行動をしている。こちらに転移された勇者パーティーは、人格に難があり、こちらの世界のために休みを削ってまで働くことはしないようだ。
もし勇者パーティーを選べるのであれば、回復術の使い手である大司祭を狙うべきだろう。他のメンバーを仕留めても最悪、蘇生されてしまっては何をやっているかわからない。大司祭を呼ぶ呼び水を準備する。
砦にはフレッシュな死体が8000人もいることから、魔王四天王の一人の死霊術師に死体を操って砦の兵士にする。死霊術師だけでなく、魔王軍は未だに四天王としての拘りが強く、魔王城で待ち、正々堂々と戦いたいことを主張しているが、魔王から直接説得してもらい、しぶしぶ前線に出てもらった。死霊術師は最後まで自分の扱うドラゴンゾンビを使いたがっていたが、それは別の機会にしてもらう。
そして、防御、回復、補助は有能だが、攻撃面でアンデッドに対してしか良いところがない。かつ大司祭は自分が中心じゃないと済まないタイプらしいので、大司祭が必ず出てくるだろう。
情報部隊を使って、人族側にその情報を流させた。
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軍が再編成されてやってきた。侵攻に時間をかけると魔王軍も準備されてしまうだろうと思ったに違いない。一週間もかかっていない。敵ながら早い。ただし、砦を守る兵士がアンデッドということで、大司祭の対アンデッド能力を信頼されてされてか、前回よりも少ない3000人程度の兵士だった。侵攻を早めたため、兵士がいなかっただけかもしれないが。
大司祭が近くの街に滞在していたのも人族にとっては幸運だったと思われる。
···が、ここまでは俺の計算通り。これだけ早いと第二の爆弾を使用できる。実はVXガスはかなり安定した物質であり、一週間はその場に残る。風魔法使いが、VXガスを出した場所を無風状態で保存してもらい、VXガスを保存していたのだ。
前回殉死した魔族のVXガスの残り成分により、その場にアシを踏み入れた軍を再度蹂躙する。
大司祭が以上に気づいた時には半数以上の軍が死に、残りも重症かしている。大司祭は慌てて広範囲回復魔法をかけるが、すでに息を引き取っている死者には当然効かず、重傷者は一時治るが、残留しているVXガスにより、再度汚染する。俺は大司祭の回復術がVXガスまでも解毒できたことに驚いた。彼女もかなりの使い手のようだ。それこそ、女神が不正していなく、かつ、彼女の人格に問題なければ神格化できたかもしれない。
大司祭自身、回復魔法が効いたことに対しては収穫があったと判断した様で、今度は自分に対して継続回復魔法をかける。
そして、次は広範囲蘇生魔法をかけ死人を生き返らせようとする、並行して、広範囲継続回復魔法を使って重傷者を治そうとするが、それらに関しては、周りの護衛から止められる。MPの関係上、アンデッドを駆逐することに全力をかけて欲しいとのことだった。彼女の魔法は大したものだが、魔法である以上、彼女のMPが課題のようだ。確かに高度な広範囲魔法を継続すればMPもなくなるだろう。
倒れていく護衛もいる中、このままでは自分がアンデッドに襲われることを思ったのだろう。護衛の言うとおり、広範囲死霊浄化魔法を使う。こちらもさすがというべきか、約8000人の死霊兵が次々に鎮魂される。死霊浄化魔法は、操られている魂部分が鎮魂されることで、死体に戻る。魂がなくなると、死霊術師といえど、操ることができなくなる。8000人の死霊兵が死体に戻り、次々と倒れていく。
大司祭自身、浄化魔法が効いたことで目的を達したと思ったのだろう。残MP量も不安に思ったのかもしれない。確実に砦の侵略を再開するため、近くの街に戻り、軍備を再編するために踵を返したところで、近くに倒れていた死霊兵が起き上がり、大司祭を刺殺したのだった。