住人事情
ある時急に外側から上司が来れば誰だって納得できない。俺の参謀というポジションは四天王連中から煙たがられたのはもちろん、邪神から神託をもらったはずの魔王からも訝しがられた。どこでもそうだが、こういう時は成果を出すしかない。まずはあまり上下関係に拘りを持たなさそうな、魔王直下の情報部隊の一人を貸してもらうことにした。ちょうど、腕は確かだが、上下関係に拘りが無さすぎて、同じく四天王連中から疎まれている人物が一人いるらしく、そいつを借りる。
そいつは魔眼の能力が使えるため、こちらの世界のいろんな所の状況が見える。ただし、一回で一ヶ所しか見れないため、同時並行で何かが起きるとわからない。
そいつ自身の感情をこめずに淡々と事実だけを報告してくれた結果、
·勇者パーティーは、勇者であることを理由にかなり好き勝手に生きているらしい。
·同族の人属に対しては、王であるかの様に金、人、権力などを求め、一般人はかなり疲弊している。
·魔族や亜人族に対しては容赦のない虐殺、鏖殺等を繰り返しているようだ。
·極めつけは、この世界に自分達のいた世界の文明を導入し、時代を進めるのに貢献しているということだった。
魔族と人間が相容れないのは根源で定められているため、どちらが悪かは俺が決めることではない。先述の通り、悪と思えても必要悪であったりすることも多々ありうる。
俺が許せないのは、よそ者でありながら、この世界の住人に対しての傍若無人な振る舞いと、こちらの世界の住人が辿るべき進化の過程を決めてしまったこと。神として判断するのであれば、この2点は重罪だ。
俺は遠慮なく、魔王側に付かせてもらう。
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魔王側の戦力も知りたいところではあるが、まずは魔王、魔王四天王に俺の実力を知らしめて欲しいというのが、邪神の判断だった。
現状、勇者達の侵攻により、魔王領域の約30%が人族領域になっているらしい。現在の攻防の最先端にある砦を奪われると、魔王城に手が届く距離になるということで、その砦の防衛が最初の仕事になった。
砦を攻めるのは勇者パーティーではなく、人族側の軍隊。勇者パーティー連中、魔王四天王ともに戦いは1vs1もしくは、四天王1人に対して勇者パーティー5人で戦う構図が出来上がっており、砦を落とすような軍略に関しては軍同士が戦うということが構図になっているようだ。
正々堂々とした戦いを根源が求めているのかもしれないが、そういった考えから変えていかないといけない。
正々堂々戦うのは綺麗事。勝てば官軍、負ければ賊軍。
そして、砦に向かった俺はわずか1日で人族を追い払ったのだ。