エスタシア
拙い文章ですいません..
目が覚めると、白く何も無い空間。
何が起きたのかすぐには思い出せない。
ぼんやりとした意識を巡らせ、状況を把握しようと努める。
確か、朝娘をバスに乗せようとして...。
「そうだ、たしか...日菜!!」
突き飛ばした娘を思い出し、ガバッと身体を起こすと娘の姿を探すがどこにも見当たらない。それに...。
「ここはどこだ...?」
辺りを見回すが、そこはただ何もない空間だ。
物音もせず、時間の流れすら止まっているかのような。
と、突然目の前に光が射す。太陽のような暖かな眩い光。
眩しくて思わず目を閉じた。
光がおさまり閉じていた目を開くと、そこには先ほどまでは気配すら感じられなかった美しい女性の姿。
女性?もしかしたら性別はないのかもしれない。神々しいという表現が一番合うだろうか。
うっすらと体全体が光を纏っている。
「あなたは...?」
静かに俺を見つめていた女性が美しい声で話し始める。
「私は慈愛の神、エスタシア。田嶋優人さん、あなたは亡くなられました。暴走した車がバス待ちの列に突っ込んで来たのです。今からあなたには、赤子として新しい世界へ転生して頂こうと思います。」
しばらく言っている意味がわからなかった。
「は...?」
つまり、愛する妻と子にはもう二度と会えないのか。
「娘は...娘はどうなりましたか?」
せめて娘の安否を...と声を上げる。
「あなたの娘は、あなたが守ったおかげで生きています。しかし...目の前で父を失った悲しみはいかほどか...とはいえ、あなたは亡くなられたので前世の家族とはもう交流は取れません。お気の毒ですが、諦めてもらうしか。」
悲しそうに目を伏せ、エスタシアは声を震わせた。
俺はショックで視界が一気に狭くなる。
胸が苦しく、呼吸も早くなってくる。
ギュッと胸を掴み、その場にうずくまるとしばらく立ち上がれなかった。
嘘だろ、何故俺が、あんなに幸せだったのに、今日は日菜の誕生日で...。と頭の中で何度も何度も繰り返す。
暴走した車。運転手は意識を失っていた。
何故、と言っても仕方がないとわかっている。
怒りをぶつける先が見つからない。
そして、娘の誕生日を祝ってあげられない悲しみ、申し訳なさ。
目の前で父親が事故にあって死んでしまった、その姿を見せてしまった後悔。
どうにか自分も死なずにあの場をやり過ごせなかったのかという気持ちが頭を支配する。
後悔は先には立たないとわかっているのに...。