謎の男『F』
麻希が学校に来るようになってから早くも2週間が経とうとしていた。最初の1週間は少し元気のないように見えたが、流石に2週間も経つと元気を取り戻し、前の明るいあざとい麻希に戻ってくれた。
そして俺はというと、中学の時の友達と遊んだ帰り道だ。今日は親に夜ご飯はいらないと言ったからどこかで食べていくつもりだがどこで食べようか。
1人でお洒落なレストランに入る気はないし、だからといって周りが騒がしいファミレスで食べる気にもならない。
何を食べるか悩みながら道を進んで行くと何かいい匂いが漂ってきた。魚介の匂いな気もするし、肉のような匂いもする。
何かと思いその匂いを辿っていくとある店に出た。店には『ラーメン大将』と書いてある。なるほど。あの匂いはラーメンだったのか。丁度いいしここで食べていくか。
そして俺は店に入った。
俺が豚骨ラーメンを頼み終えると、少し怪しげな格好、もっと詳しくいうと全身黒ずくめの男が店に入ってきた。しかも、その男は空いている席があるにも関わらず俺の隣に座ってきた。そして俺と同じように豚骨ラーメンを頼むと、いきなり話しかけてきた。
「やぁ、突然すまないね。君が橘恭介くんかな?」
「ブッフォ!ゲホゲホ…ゴホゴホ」
あまりの衝撃に食べていた麺を吐き出してしまった。なんだこのおっさん。
「そう…ですけど。なんですか? というかあなたは誰ですか?」
俺が問いかけるとその怪しい男は笑いながら答えた。
「ハッハッハ、そうだね。まずは僕が名乗るべきだったよ。そうだな、じゃあ『F』と呼んでもらおうかな」
『F』? ふざけているのかこの親父は。結局名乗っていないじゃないか。あのツンツンな先輩ですら名乗ってくれたんだぞ? それに俺の名前を知っているし…。
「はぁ…、まぁではFと呼ばせてもらいます。まず聞きたいんですけど、どうして俺の名前を知っているんですか?」
「そうだね、ちょっと調べさせてもらったんだよ。君のことはぜーんぶ知っているよ。あの過去のこともね」
あのことも知っているのか? あのことは俺とあいつしか知らないはずなのになぜこいつが知っている。何者なんだ、Fは。
「黙れ!あのことは話に出すな!俺は忘れたいんだ…」
「そんなに声を荒らげては行けないよ橘くん。ここはお店なんだから。あのことは辛かったね。しかし、それで幸せを諦めてしまってもいいのかい?」
こいつは挑発してきているのか、同情してきているのかは分からないがウザい。なんだか分からないけどこいつからはヤバい空気を感じる…。ここに長居していると危険かもしれない。
「そんなのお前には関係ないだろ。人の人生にあれこれケチつけるのはやめてくれ!」
「すまないすまない。今日はこれぐらいにしよう。お詫びとしてはなんだが君の分のお金も払っておくよ。じゃあ、さようなら」
男は頼んでもいないのに俺の分の金も払って出ていった。あの男は俺に何を伝えたかったんだ。でも考えても分からないしな。ただ、最後の『幸せを諦めてしまってもいいのかい』という言葉はどうにも引っかかる…。
まぁいいや。ひとまず、このラーメン屋にはもう二度と来ない!
長い間投稿せずすみませんでした。これからは1週間に1話から2話のペースで書いていきます。
P.S.地震ありましたが無事です。




